部品について
 
音が良いとか悪いとかじゃありません。基本的な性能についてです。
今のところ、以下の部品について。

抵抗器

放熱器

ツェナーダイオード

FET

コンデンサ
 

ご質問、ご感想、誤りのご指摘、或いは「テメー、コノヤロー」等はメールでお願いします。

 抵抗器の特性
金被は1kΩ以上の高抵抗は負の温度係数(-25〜-50ppmぐらい)を持ちます。炭素被膜抵抗は一般に-500ppmぐらいで、一桁大きく、やはり負の係数です。ソリッドカーボンはさらに二桁悪く、正の係数です。
基本的に、電気抵抗は通常の物質は熱が上がると抵抗値も増えるので正の温度係数ですが、厚さ(薄さと言うべきか)が分子レベル近くにまで達すると熱(分子運動)によって自由電子が移動し易くなるため、逆の特性になるのです。従って、電流性の雑音特性と温度特性は比例関係にあります。

雑音の問題になるところでは、金属皮膜を使うべきなのです。金属薄膜はさらに雑音が小さくなり、ほぼ理論的な熱雑音に等しくなります。薄膜抵抗とカーボン皮膜では、雑音電圧で見て20dB以上の違いが生じます。
 

熱雑音の理論に関しては、誤解している向きがあるようなので少し書いておきますが、熱雑音それ自体は流す電流とは関係なく発生するもので、抵抗値の自乗に比例して大きくなります。
これは同じ抵抗値でマッチングをとった時に最大電力になり、これをもってその理論値としています。

従って、通常ローインピーダンスで送り出すオーディオアンプの出力では問題になり得ません。
当然、パワーアンプの入力もあまり関係ありません。

従って、抵抗の熱雑音が問題になるアンプはありません。MC入力の場合には低い値になるので、主に問題は熱雑音ではなく、電流性雑音です。それにしても、外部からの飛びつきの方が大きいでしょうから、実際的に問題にすべきは初段の負荷抵抗の電流性雑音のみ、と言うことになります。

勿論、チューナーの入力では熱雑音は大問題ですが。
 

その使い分けとして、例えば定電流を作るのに、温度安定度を高めるためにTrのVbeを温度補償していながら、炭素皮膜抵抗器なんか使ったら無意味ですし、選別使用などを含めて炭素皮膜抵抗器の高精度も無意味です。自己発熱が小さくても、アンプケース中は高温になりますからね。

通常、家電製品の温度は 0℃〜+70℃まで保証しますから、この温度範囲での精度で設計します。70×500×10-6=0.035 ですから、温度だけで3.5%の誤差を持ちます。(車の電子機器は-30℃〜80℃位です。)
だから炭素皮膜は5%精度なのです。これ以上は意味がないし、選別使用なんかしても、実動作ではどうなってるか解ったもんじゃありません。

しかし、性能が同じなら値段の安い方がエライ(?)ので、精度の要らないところに金属皮膜はまた無意味です。

最も温度特性等の諸特性の良いのは薄膜です。巻線はインダクタンスの問題がありますから、高周波には向きませんが、100Ω以下の低抵抗なら問題ないでしょう。無誘導巻の物もあります。
そもそも、高抵抗を高周波に使う人もいないでしょうから、案外問題は小さいかも知れません。

抵抗器にも、最大使用電圧の定格があります。物によって違いますが、概略1/4W〜1/2Wで300V〜400V位です。酸化金属皮膜だともう少し大きな値になります。(酸化金属皮膜と金皮は別物です。)
これは絶対定格ですから、瞬時といえども超えてはいけません。高電圧の真空管アンプで出力段のプレートから帰還をかける場合などには要注意です。
抵抗に限らず、最大電圧を無視した設計は、オーディオ技術誌などではよく見かけますから、簡単にまね出来ません。いきなり100%壊れる訳でも無いですが、壊れても文句は言えません。

許容損失はメーカーにより物により条件が随分違います。脚を短く切って広いパターン面に半田付けすればぎりぎりの損失でも使える場合がありますが、実装条件で大幅に違いますから、普通はディレーティングを考慮します。許容損失は周囲温度70℃での規定が多いですが、40℃の場合もありますから注意が必要です。

また、皮膜抵抗器は、金属系でもカーボンでも一般的にパルス負荷には弱いので、実効電力が小さくても大きなパルス性の負荷がかかる用途では破壊の可能性があります。ヒューズ抵抗などはさらに異なった定格ですから、良く調べてから使いましょう。

 放熱器
温度特性の話が出たので、放熱について。

放熱器は黒いものが多いですが、これはちゃんと意味があります。黒いものが熱(赤外線)を吸収し易いのは良く知られている所ですが、吸収し易いという事は、逆に出し易いという事でもあるからです。
アルミ放熱器の放熱の半分は空気の対流ですが、残りの半分は実は輻射によるものらしいです。塗装が問題になるのは、この輻射熱が変わるからです。アルマイト処理されたものもそれに近い効果があるらしいのですが、理由が分かりません。(アルミ削り出しは最悪です。)

同様の理由から、電源トランスも黒が多いのですが、真空管アンプのシャーシも、パワー管の近く以外を黒で塗るのが良いのでは無いかと、私は思います。

その後の調査によると、どうやら色よりもむしろ塗料の方が重要らしいです。(色が無関係では無いかも知れませんが、塗料と定量的に比較すれば無視できる、と言う意味です)アルマイトでも近いのは、輻射率の関係らしいですが、表面処理も関係しているようです。

物理では黒体輻射と言いますが、赤外線からみて“黒い”ものが可視光で黒とは限らない、という事です。大変失礼しました。

また、輻射率との関係で、フィンの間隔にも最適値があるようです。2005/9/25

抵抗器や半導体の放熱は、基板の銅箔パターンによる部分が少なからずあります。脚を短く切って、広い銅箔面にはんだ付けするだけでも随分違ってきます。最近は面実装部品が多いので、銅箔パターンを用いた放熱を定量的に求める計算ソフトなどもあります。
昔、10Wのスイッチング電源で、面実装Trの放熱をプリントパターンで処理したことがあります。80℃での環境温度試験で、全く問題なく動作しました。

最近のテスターには温度測定の可能な物があります。温度により銅-コンスタンタン等の異種金属間で発生する接触電位を利用するものです(熱電対と言います)。これは、直接半田付けしてコレクタの温度が測れますから、温度設計に自信が持てないときには利用されると良いと思います。
注:CPUクーラーに使われる、いわゆるペルチェ効果による放熱素子は、物理化学的には熱電対の逆反応です。
基本的に、半導体が熱で壊れるかどうかは、損失がどうこうと言うよりも、その温度が150℃ぐらいを越えたときに壊れます。だから、実際に自分が使用する環境で、温度を測っておけば安心です。最高使用温度で110℃であれば安心できる、と言われていますが、実際には本当に最高温度になるまで真夏の一番熱いときにクーラーもかけずに何時間も測定する訳にもいかないので、常温で80℃ぐらいならOKとして良いでしょう。

但し、損失に鋭いピークがある利用法では、平均電力損失だけで決めるわけには行きませんので、注意して下さい。
 
 

 ツェナーダイオード
ツェナーダイオードの電圧、これを降伏電圧と言います。
降伏電圧は、5〜7V以下の電圧(物によって違う)はツェナー降伏ですが、これ以上では雪崩降伏と呼ばれる現象によるものです。ツェナー降伏では負の温度係数を、雪崩降伏では正の係数を示します。この辺りの電圧で物理的な動作が変わるために、温度係数が殆ど零になるのです。

定電圧電源等では、ツェナー電圧が7V付近が最も安定度が高くなります。これはツェナーの温度特性とPN接合の温度特性が逆になり打ち消すからです。抵抗器の所で定電流回路について触れていますが、定電流回路のVbeの温度保証としてこうする手もあるのです。

ローノイズツェナーのノイズ電圧は、高電圧だと一般品に比して1/10以下です。
ツェナーのノイズは白色性ですから、わりに目立ち(耳立ち?)やすく、信号経路での使用では、ローノイズツェナーの有難味を感じます。
尚、ツェナーのノイズのスペクトラム密度分布は、一般に電圧に対する比例関係があります。ローノイズツェナーの方がこの係数も小さいので、高い電圧程、差が大きくなります。

ツェナーノイズを小さくするためには、十分に電流を流す事が肝心で、これはツェナーの種類に関わらず、常に言える事です。ローノイズツェナーは一般に低い電流から優れた定電圧性を示しますが、それでも電流が小さければやはりノイズは増えます。10V付近で、少なくとも5mAぐらいは欲しい所です。

ツェナーの動作抵抗も、勿論電流を流した方が小さくなります。従って、定電圧電源の誤差増幅器の利得はツェナー電流で変わることになります。

温度に対するディレ−ティングを考慮に入れても、日立のローノイズツェナーHZLシリーズで、0.2Wの損失は余裕でこなしますから、遠慮せずに電流を流しましょう。
 

 FET
FETは、MOS型、接合型共にQポイントと呼ばれる温度的に安定なバイアス点があります。
昔、DCサーボ等使われなかった時代のメーカー製DCアンプ等では、Qポイントに初段FETのバイアス点を設定する設計がよく見られました。

最近の自作のトレンドは対称回路等が多く、PchとNchではQポイントを一致させると|yfs|(=gm)が一致しない為に、あまりこういう設計をしなくなりました。

FETのNF(Noise Figure)は信号源抵抗が大きいと時ほどバイポーラに比して小さいのですが、抵抗負荷ではゲインがトランジスタに比べて小さく一般に抵抗負荷で電圧増幅する低周波で御利益はあまりありません。
普通、高周波では、L負荷での電力増幅度を問題とします。だからマッチングをとって電力損失が無いようにするんです。こうすると、出力の負荷で発生する雑音は無いので、入力でのNFが問題になるのです。

 コンデンサ
オーディオマニアの大好きな(?)コンデンサのお話ですが、「ブラックゲートの低音は・・・」とか「OSコンは明るい音で・・・」なんて話は一切 書いてありません。
悪しからず(^^;/。

気にしない方が多いようですが、コンデンサも温度特性を持ちます。しかも、実はかなり大きいのです。
アルミ電解コンデンサの場合、通常+2500ppm/℃ぐらいです。タンタル電解は+800ppm℃、有機半導体(Organic Semiconductor:OSコン)もタンタルと同じ位です。

特にアルミ電解を時定数回路に使う場合には温度を考慮に入れる必要があります。アルミ電解の許容誤差は、通常-20〜+80%ですから、精密なフィルタ回路等には使えません。
安物のスピーカーのネットワーク・フィルタには無極性電解が使ってありますが、右と左でクロス周波数が倍ぐらい違っても不思議じゃない、って事です。

フィルムコンデンサはアルミ電解よりずっと優れていますが、やはり温度特性を持ちます。一番良いのがポリカーボ、次にポリプロピレン、最後がポリエステル。
ポリカーボで±50ppm/℃、ポリプロは係数が負で-200ppm/℃、ポリエステル(マイラ)で+400ppm/℃です。
但し、マイラは60℃とかを超えると急激に悪化する非線型な特性、ポリカーボは穏やかなカーブですがやはり非線型、ポリプロは線形です。
ポリプロは使用温度範囲が他のフィルムコンよりも小さいので、要注意です。熱に強いのはポリカーボです。

セラミックは温度特性が選べます。-4700ppm/℃〜+100ppm/℃迄各種あります。NP0(温度特性がほぼ零)もあります。

オーディオマニア御用達(^^;)のマイカ・コンデンサはあらゆる性能がNo.1の理想コンデンサに近いモノですが、唯一の弱点は値段があまりにも高い事。

使用温度範囲は、通常のアルミ電解で-30〜+85℃ですが、高温度品(105℃)もありますから、真空管アンプにはこれが良いと思います。フィルムコンデンサもそれぐらいです。

アルミ電解が寿命を持つのは良く知られていますが、これは使用温度やリップル電流で大幅に変化します。
通常、温度が10℃上がると、寿命は半分になると言われています。さらに電解は誘電正接(tanδ)が大きいので、リップル電流が大きければさらに温度上昇を加速し、寿命を縮めます。
tanδ自体も温度特性と周波数特性を持ちます。

Long Life品は5倍ぐらいの寿命のものもあります。

アルミ電解は放置寿命も限界がありますから、ビンテージラジオなんかは注意すべきです。5年やそこらで容量抜けする訳でもありませんけど、100年保つ訳でもありません。
放置した賞味期限(^^;)は規定が無いので、経験的なものですが、20年ぐらいは全然平気でした。(普通、試すかねぇ、そんなもの^^;)

使用している場合ならば、最近の通常品で、8時間/dayでの使用で周囲温度40℃の時に15年ぐらいの規定です。
つまり、普通は自作アンプで問題にはならないのです。
5年や10年で駄目になったなら、それは貴方の使い方か、保管方法が悪いと思って下さい。部品のせいじゃありません。

アルミ電解の故障モードには
1. 圧力弁の作動
2. 静電容量の減少
3. tanδの増加
4. 漏れ電流の増加
等があります。機械的な故障としてはショートやオープンもありますが、これはボンドで接着したとか、リードをペンチで引っ張ったとか、トンデモをやった場合です(アマチュアはやりかねないから恐いけど^^;)。

故障原因としては、逆電圧印加、過大リップル、過電圧印加、AC電圧印加、過酷な充放電、高温度での使用、長時間連続使用等。

例えば、真空管の段間カップリングにアルミ電解を使ってはいけません。
真空管アンプの場合は通常は出力トランスがあり、5kΩ:8Ωで25:1ですから出力よりもプレートは25倍大きなAC電圧です。終段利得は小さいのが普通ですからドライブ段のAC電圧はかなり高くなります。
つまり、相当な電圧変動がありますから、「過酷な充放電」になります。もって数年でしょう。

許容リップル電流規定も忘れてはいけません。リップル電流の周波数によっても違います。周波数が下がれば許容電流値は小さくなります。
許容リップル電流は容量と耐電圧に比例関係にありますから、電源整流に使う場合は「電解コンは大きいに越した事はない」という至極当たり前の話になります。
小容量のコンデンサの並列使用は駄目です。一部のコンデンサに電流が集中して過リップル電流で破壊する場合があります。一個でも十分なものを並列使用するのなら大丈夫ですが、その場合も配線長に注意すべきです

普通はデータシートで周波数に対するリップル補正係数が発表されているので、それに従います。電圧があえば、何でもかんでも使える訳じゃ無いのです。
スイッチング電源用は、低周波の大きなリップル電流を許容しませんから、ジャンク屋で安売りしてたって買っちゃ駄目ですよ。

スイッチング電源や高周波での使用以外では、フィルムコンのtanδが問題になる事はないでしょうが、フィルムでtanδが優れているのはポリプロです。tanδが音質に影響すると見る向きもあるようですが、確認された事項とは言えないようです。しかしtanδが小さい方が理想コンデンサに近いのは間違い無いでしょう。
アルミ電解コンはtanδについても最悪で10%ぐらいあります。フィルムは1%以下です。
(アルミ電解コンのカタログに書いてあるtanδは、常温で120Hzでの値です。低温、高周波では極端に悪化します。)

タンタル電解はアルミ電解よりも優れた特性を持ち、アルミ電解と違って放置寿命に限界がありません。但し、逆耐圧が極めて小さく、1V以下でも破壊に到ります。サージ電圧でも簡単に破壊します。しかも、タンタル電解はダイオード等と同じようなショートモードでの破壊です。
許容リップルもそれ程大きくないので、電源に使う場合には余程の注意が要ります。
はっきり言えば、一般のアマチュアは使わない方が無難です。値段も高いですしね。

アルミ電解の耐圧はサージに対してはかなりの余裕がありますから、簡単には壊れませんが、耐圧を超える直流電圧がかかるような使用は厳に慎まなければなりません。100時間ぐらいなら、保つかもしれませんが。
DC耐圧とAC耐圧は当然異なります。フィルムの場合にはAC=DC/2√2 です。サージの吸収用に15kV耐圧なんてのもあります。ACのアクロス・ザ・ライン・コンデンサには電取法で厳しい規格制限があります。

最近では 「機能性高分子アルミ電解コンデンサ」というものもあります。ノーベル賞を受賞した白川博士の発見した導電性ポリマーを、アルミ酸化皮膜の上に形成する事で、電解液の替わりとする個体電解コンです。
tanδがセラミック以上に小さく、温度特性はフィルム並み、高周波特性も良いという驚異的な性能を誇りますが、高耐圧品はありません。16Vが最大です。つまり弱点はOSコン並ですね。

高周波用には無誘導巻のフィルムもあります。高周波特性はフィルムの中ではポリプロが優れます。昔はスチロールなんてのもありましたが、今はありません。マイカが最高性能、一番普通に使うのはセラミックですが、歪みが問題なる場合には使えません。

コンデンサの規格には振動特性というのもあります。MIL規格では10-55Hz:1・・・10-2kHz:3と言う風に表しています。セラミックコンデンサは振動に弱く「打てば響く(^o^)」コンデンサです。

フィルムコンの故障モードはオープンが普通ですが、規格を超える高電圧ではショートの場合があります。
メタライズド・フィルムコンデンサには自己修復作用があり、電極が接がったら溶けて切り離すからですが、規格以上の高電圧では燃えてショートしてしまいます。

普通品のアルミ電解は安価です。これは重要なポイントです。
ブラックゲート(確かに、物理性能は良い)の100μF/50Vと同じ値段で普通品の1000μF/80Vが買えるのなら、どちらが本当に性能が上なのか、よく考えてみる必要があると思います。

Home