何時だって、彼は眩しかった。
いつも惹かれていた。
彼は誰に対しても優しい様に見えた。
その笑顔を皆に向ける。
彼は自由だった。
自分の意思一つでその身体を抜け出し、もう一つの世界を自在に翔ける。
まるで本物の鳥のように。
何時しか心に暗い澱みが出来ていた。
彼を独り占めしたい。
この暗闇に彼を繋ぎ止めたい。
そう思うようになっていた。
けれど。
やはり彼は眩しくて。
やはり彼は自由で。
どうしようもない恋慕と嫉妬。
何時しか其れは、押さえきれないほどに大きく膨れ上がり・・・
気が付いたとき、自分は彼を押し倒していた。
薄暗い部屋。
其処に彼を閉じ込めて・・・
お互い両親は忙しく、家に誰も居ないことが多かった。
彼の妹も活発的で、よく出かけている。
その日は泊りがけで家人は皆出かけていた。
その度に互いの家に泊まる事が当たり前になっていた為、彼は気軽に自分を家に招き入れた。
今、此処に居るのは二人きり。
突然の自分の変貌に驚愕する彼をベットに押さえつけ、白いシャツを引き裂いた。
それを後ろ手に縛って腕の自由を奪う。
見開かれ、涙ぐんだ彼の瞳に自分の姿が映る。
微かな光を反射して、自分の翠の瞳が妖しく輝いているのが見えた。
まるで、獲物を狙う獣の様に。
「・・・アスラン!?」
脅えたような顔をするキラの姿に胸がちくりと痛む。
同時に酷くその姿が魅惑的に見えて、口がつりあがるのを感じた。
その表情に、一層彼の戸惑いが深くなる。
今まで決して見せなかった自分の一面・・・いや、本性かもしれない。
其れが今・・・枷から解き放たれた。
自分の欲望の全てが彼一人に向く。
彼の全てを喰らい尽くそうと・・・
自分の中にある強烈な独占欲。
それを自覚したのは何時だったか。
自由な存在である彼を束縛など出来ないと知っていても・・・
それでも彼の全てを手に入れたいと足掻く。
酷くそれが滑稽に見えて・・・喉の奥から笑いが込み上げた。
露になった白い肌。
その美しさに目を奪われる。
其れを自分は穢すのだ。
綺麗なものを踏み躙る罪悪感と、そして快感。
舐めるような視線に、彼は身を竦ませる。
その仕草さえも、今の自分を煽るものでしかない事を彼は判っていない。
緊張にやや汗ばんだその肌に、そっと手を滑らせる。
彼の全てを見たい。触れたい。
「・・っ」
そんな想いに駆られて白い頚に顔を埋め、強く咬む。
痛みに彼が抗議するが、お構い無しに其れを繰り返す。
徐々に増える赧い痕。
自分のものであるという、所有の印。
慣れぬ快感に苦悶の表情を浮かべ、身を捩る彼の身体を我が物顔で蹂躙する。
「・・やっ・・ぁあっ・・」
彼の肌を這う舌が、胸の突起に触れれば一際大きく身体が撥ねた。
其れさえも押さえつけ、執拗に其処を攻めれば今まで必死に声を殺していたキラも耐え切れず悲鳴を上げた。
更に彼の身体を貪りながら、その手は一足先に彼の下半身に伸びる。
布越しに其処を撫で上げれば、彼の身体は一層悶えた。
フックを外し、手を滑り込ませれば、其処は既に濡れ始めているのが判る。
そのままの状態で擦り上げる。
それから逃れようと暴れる彼の身体を少し荒っぽく押さえつけた。
元々力だけなら自分の方が上。
それでも本気を出せば、自分を振り払う事も出来るのに・・・
彼は優しいから。
此処まできても、まだ『親友』である自分を傷つけようとは思わないから。
その優しさにつけ込んでいる自分。
「綺麗だね・・・本当に・・・」
静かな言葉とは裏腹に少々手荒い扱いをされ、一瞬彼の動きが止まる。
其の隙に再び行為を再開すると、未だキラは抵抗するも、其れは徐々に弱くなってきていた。
快楽に身体が素直に反応を示し始めている。
ただ心だけが拒絶している。
その拒絶を取り払うべく、アスランはズボンの中の其れを更に煽る。
彼の手と擦れる布の感覚にキラの息遣いは荒く、微かに紅い舌が見え隠れする。
アスランはそろそろ頃合と見て、彼の下半身を覆うものをずり下げる。
少し邪魔だが、敢えて完全に取り払ったりはしない。
其れもまたシャツ同様、彼を縛る枷となるから。
一度キラの身体から離れる。
傍にあった温もりが消えたことで急に冷えた彼の身体が震える。
そんな様子に笑みを浮かべてその肢体を見渡す。
上半身に無数に刻まれた赧い痕。
そして露になった彼の中心は既に濡れそぼって、その周囲をも濡らしていた。
其れを楽しそうに見れば、彼は硬く目を瞑って顔を背けた。
だが、煽られた身体は正直で、簡単に熱は収まらない。
しかも見られているという羞恥が更にその熱を煽る。
徐々に解放を求めて形を変える其処を、焦らす様にその周囲を撫であげた。
その手から自由にならない身体を捩って逃れようとするが、敏感になった身体は、シーツが擦れるだけでも疼きを増す。
動くに動けないのを良い事に、更に焦らすように今まで触れてなかった部分を撫でていく。
イきたいのにイけない。
「・・アス、ラン・・ッ」
その苦しみからキラは助けを求めてくる。
しばしの間を置いて、ようやく其処に触れて撫で上げれば、彼はなんとも色っぽい声を上げた。
背筋に電流が流れた様な感覚に、彼は半分意識を飛ばしかける。
しかし其れは敵わず、その表情が再び強張る。
「嫌だっ・・放して・・・っ」
「まだ駄目だよ・・」
自分を高めていたその指が、解放を妨げるように根元をきつく絞めたからだ。
そして、続いてきた生々しい感触に、全身を泡立てさせる。
散々彼の身体を嬲ったその舌が、彼自身にも絡みついたから。
今までの感触と比べ物にならない其れに瞳が此れでもかというほどに見開かれる。
ささやかな抵抗を受け流し、其れを隅々まで舐めあげると彼の身体が弓なりに仰け反った。
歯を立ててやれば戒めているにも関わらず、その先から更に液体が流れ出す。
しばし其れを味わった後、其処から離れて彼の顔に自分の顔を近づけた。
出口を求めて荒れ狂う熱に翻弄され、キラの目からは涙腺が壊れた様に涙が零れ落ちる。
アスランは其れを愛しそうに舌で舐めとりながらも、その指を外さない。
それどころか其れを戒めているのとは別の指が、更に熱を煽る。
撫で上げ、引っ掻くなど容赦無く蠢く其れは脳が焼け付くような刺激を与え、それによって彼の身体が激しく痙攣を起こしたかの様にがくがくと震えた。
そんな彼に深く口付け、其の口内を蹂躙しながら戒めていた指を外し、強く彼自身を擦り上げた。
「んんっ・・んぅ・・っ・・・んんーーーーーっ」
その瞬間、彼の身体が大きく跳ね、自分の手に其れを吐き出した。
糸を引きながら唇を離すと彼は大きく肩で息する。
焦点の合わない瞳がぼんやりと天井を見上げていた。
「もっと・・もっと啼いてよ、キラ・・・僕のために・・・もっと・・・」
朦朧とした彼の身体を抱き上げ、うつ伏せにすると片腕でその腰を抱え上げ、四つん這いの様にする。
そして先ほど彼が放ったもので濡れる自分の指を、徐に彼の中に挿し入れた。
されるがままになっていた彼の身体が大きく跳ねる。
逃げようとする腰をしっかりと捕える。
腰を支えるその指は未だ力を失わず、液体を滴らせているキラ自身に再び絡みついた。
彼に覆い被さるような格好になり、その背に舌を這わせると其の身体が戦慄く。
込められた力に彼の中への侵入が妨げられる。
それでもアスランの指は彼の内を無理やり押し広げていく。
「ひぁ・・っ・・ゃ、ぁ・・ぁ・・っ・・・」
痛みと異物感にシーツに顔を押し付けながらキラは苦しげにうめいた。
それでもその動きは止まらず、やや解れたと判断すると更にもう一本挿し入れられた。
更に増えた質量に、キラは苦悶の表情を浮かべる。
内臓がかき回されるような感覚に吐き気がする。
それでも其れは徐々に何とも云えない疼きに変わっていった。
いつしかキラは自ら指を更に奥へ導こうと腰を動かす。
「・・・良い子だね、キラ・・・」
その反応にアスランは満足して、更に指を増やした。
それぞれの指が違う動きをして内壁を抉る。
しかし其れは本当に疼く奥まで届かない。
身体を這う舌。
そして自身に絡みつく指の動きも相まって、再び熱が高まっていく。
それでも本当に欲しいところに触れてもらえない。
「ぁ・・アス・・ラ・・ン・・っ」
そんなじれったさに、自由にならない身体を切なそうにくねらした。
彼の哀願を無視し、そのまましばらく彼の内を指でかき回し続ける。
そして十分に解れたと判断してから、アスランは一気に指を引き抜いた。
「あぅ・・っ」
突然訪れた喪失感に、軽い失望と安堵感を味わったのも束の間、今度は指よりも遥かに大きな質量が彼の身体に割って入った。
思わず逃げる腰をしっかりと掴み、異物を拒否する其処にアスランは容赦無く己を押し込める。
少々キツイが、それ以上に感じる熱に一気に彼の身体の最奥を目指す。
「いっ・・痛っ・・ぁ・・やめ・・・・っ・・・アスラン・・っ」
身体が引き裂かれるような痛みにキラは悲鳴をあげた。
無理に押し入った為か、内部のどこかを傷つけたらしい。
シーツに赤い斑点が出来る。
しかし啼き声も・・・そしてその血の色さえとても魅惑的で、熱が更に煽られる。
奥まで辿り付くとアスランは一度大きく息をし、呼吸を整えた。
そしてそのまま内壁に己を擦りつけ始める。
出し入れを繰り返す度、キラの喘ぎと共に淫らかな音が部屋に響き、耳を刺激する。
キラは熱の篭った息を苦悶と共に吐き出すが、もはやまったく気にならなくなっていた。
欲望のままに彼の身体を貪り、陵辱する快感。
今の彼は何も、誰も見ていない。
只自分だけを感じている。
その事実にアスランの中の黒い感情が喜びの声を上げる。
今、確かにキラは自分だけのものになっているのだ、と・・・
徐々に激しくなっていく動きに先ほど以上の熱が脳を焼く。
もはや何も考えられなくなったキラはただされるがままに身体を開き、嬌声を上げた。
「そろそろ・・かな・・」
アスランは自分の限界を悟り、その動きは更に激しさを増す。
「・・・も・・ぉ・・ぃ・・・・ぁっ・・ああぁぁーーーっ」
鋭く最奥を穿ち、其れによって再び達したキラの其処が己を締め付け、アスランもまた彼の中に欲望を吐き出した。
ぐったりと力を失った彼の姿。
未だ自分と繋がったまま・・・何とも云えない色気を漂わせたその姿に黒い欲望は更に大きくなる。
まだ。
まだ足りない、と・・・
彼の足を戒めていた脱ぎかけの布を完全に取り払うと、その身体を再び仰向けに反転させる。
無論繋がったままなのだから、達した直後に擦られた内壁に彼はあられもない声を上げた。
体勢を変えた際に繋がった其処から溢れた其れが、キラとアスランの身体を伝う。
其の様に目を細めながらも自由になった彼の足を掴み、舌を這わせる。
「ひぁ・・っ」
その感触に、キラは裏返った声を上げる。
全てを。
彼の身体の全てを味わう為に。
今までの行為で全身の感覚が鋭くなっているのか、何処を触れてもキラは大きく反応を返す。
其れがまた楽しくて、更に彼の肌を貪る。
彼の啼き声が心地よい。
合わせた肌から伝わる熱。
なにより繋がった部分からくる感覚はアスランを陶酔させた。
一通り済ませると、アスランはそのままキラの足を大きく広げさせ、再び動き出す。
無体な姿と過ぎる快感に顔を羞恥に染め、彼は力なく首を振った。
「・・アス・・ラン・・・もぉ・・ぁんっ・・・やめっ・・・はぁ・・ァぁ・・・っ」
「駄目だよ・・・まだ足りない」
しかし狂気にも似た輝きをその目に宿すアスランは聞き入れない。
先ほど同様、猛った己で激しく彼の中を掻き回す。
「ぉ・・おねが・・ぁっ・・もぉ・・やめ・・いや・・ぁ・・っ」
途切れ途切れな声で哀願するキラに、アスランは意地悪く微笑む。
「嘘ついちゃ駄目だよ?
キラだって、まだ足りないはずなんだから・・」
「・・ち・・が・・っ」
「違わない・・だってほら・・・君の身体はこんなに喜んでいる・・・」
そう云って彼自身を指でなで上げる。
それは既に二度達してたはずの其れが再び勃ち上がりかけていた。
其の事実を突きつけられて、彼の顔が羞恥に歪む。
「だから・・このままやめたらキラも辛いだろう?」
其の言葉と共に彼の指がキラの身体をなぞる。
それだけでキラの其処からは更に液体が流れ出した。
僅かな刺激にも身体は反応し、その動きで内壁が擦られる。
それによって煽られる熱は、更に身体を過敏にする。
その悪循環にキラは為す術が無い。
立て続けに襲いくる官能の波に、キラの意識は霞む。
甘く広がる痺れは全身の感覚を奪っていく。
快楽以外の全てを。
しかし過ぎる其れはもはや苦痛でしかなく、自分を制御出来ない身体は熱を発散させきれずに限界を超え始めていた。
アスランも自分ほどではなくとも似たような感覚を味わっているハズなのに、其の動きをやめようとはしない。
更に熱を引き出そうとする。
彼に出来るのはただ彼に貪られつづける事だけだった。
喘ぎ声さえすでに涸れはじめている。
それでもアスランが彼の中から出て行く気配は微塵も無い。
より刺激が齎される場所を探り当てていた彼は、其処ばかりを容赦無く抉る。
そして再び耐え切れず達したキラの締め付けに、アスランも其の熱を再び彼に流し込んだ。
繰り返し繰り返しアスランはキラの身体を攻め立てる。
足りない。
もっと。
其の想いは交われば交わるほど強くなる。
脳のどこかが痺れてしまったのか、感覚はもう殆どないに等しい。
それでも尚、幾度と無く其の身体を揺さぶり、最奥を何度も貫く。
ベットのシーツは既に汗や涙、そして血の混じった精液・・・様々な液体でぐしゃぐしゃになっていた。
湿って纏わりつく其れは、本来ならば不快なもの。
しかし快楽に溺れる二人の意識からは、それは締め出されていた。
気が狂いそうなほどの官能の渦に、いつしかキラは意識を手放した。
それでもアスランの動きは止まらず、そしてキラの身体も勝手に反応を返しつづけた。
肌に直に触れる温もりを感じてアスランは目を覚ます。
じっとりと滲んだ汗は少し不快で、気だるい目覚めに眉をひそめた。
どうやら力尽きて眠ってしまっていたようだが、それでも左程時間は経っていないらしい。
傍にある温もり。
それはキラのものだった。
其の身体に散る赧い痕に苦笑する。
ゆっくりと身を起こし、彼から己を抜き取る。
すると其処から自分の吐き出したモノが、ごふりと溢れ出た。
縛り付けていたシャツを腕から外してやる。
相当力を込めていたのか、皮膚が僅かに裂け、血が滲んでいる。
その腕をとり、傷に舌を這わせれば、口の中に鉄の味が拡がった。
これからどうしようか。
そう思う。
今まで築いてきたキラの親友という立場を崩してしまった。
今まで通りになど出来はしないだろう。
いっそのこと、本当に彼をどこかに攫ってしまおうか。
そんな想いさえ浮かんでくる。
無理やり犯した事に対する罪悪感と同時に、やはりキラを誰にも渡したくないという想いが募る。
彼の身体を陵辱している間、間違いなく彼は自分だけのものだった。
そう感じられた。
それは今も変わらない。
未だ汗と涙に濡れる彼の頬を、そっと撫でる。
いっそ、本当に壊してしまおうか。
壊してしまえば、自分のものになってくれるだろうか。
微かに身じろいだキラに、アスランは思考を中断する。
散々貪られた彼は目覚めそうで、なかなか目覚めない。
しばらくキラの寝顔を眺めていたアスランだったが、一度部屋を出る。
少しの間を置いて戻ってきた彼はぐったりとしたキラを抱きかかえると風呂場へ向かった。
その際、ぐしゃぐしゃになったシーツも丸めて洗濯機に放り込む。
浅めに湯を張った浴槽に、キラを抱きかかえながら浸かった。
時折湯を少しかけて汗を流してやると、彼は再び身じろぐ。
しかし其れだけで意識を取り戻す気配は全く無い。
そんな様子にどこかほっとしながらもボディソープを手に取ると、スポンジであわ立てる。
そしてそっと其の身体を洗い始めた。
腕を洗う際に傷に沁みたのか、少し身体が跳ねるがそれだけだった。
上半身と湯に浮かぶ足を洗い終え、シャワーで流すと自分に寄りかからせるように抱える。
先ほどまで自分が居た場所へ指を挿し入れると流石にキラの身体は大きく反応した。
慎重に中に放ったものを掻き出していくと、其の度にキラの身体がびくびくと震える。
呼吸がやや速くなり、時折洩れる声がアスランの耳を擽った。
いつの間にか其の腕は縋りつく様に背に回されている。
一通り洗い終え、指を引き抜いてもキラの腕はそのままだ。
指は未だ燻っていた熱を再発させてしまったらしい。
魘されているかのように眉を寄せる彼の姿に期待してしまっている自分がいることをアスランは苦笑する。
まだ自分を求めてくれているのだという期待を。
其の額に触れるだけのキスを落とすと、やはり勃ち上がりはじめていた自分を再び彼のうちに穿つ。
途端に大きく身を仰け反らせるキラを支えながらも更に押し進めると、彼の爪が背に食い込んだ。
湯によって洗い流されてしまっているため、痛みを和らげる円滑油は無いに等しい。
それでも散々嬲った其処は、緩んだままで思ったよりも負担は少なかった。
寧ろ、先ほど以上の強い摩擦に目の前で火花が散る。
自重でキラの身体は否応無しにアスランをより深く飲み込む事になった。
合わされた肌から伝わる心音が徐々に早くなり、早鐘が打ち鳴らされる度に熱も急速に集まっていく。
二人が果てるのにそう時間はかからなかった。
新しくシーツをひきなおし、別の服を着せたキラをゆっくりと横たえた。
湿った髪が顔に張り付いた様は酷く魅惑的で、アスランを惑わせる。
起きたら彼はどんな目で自分を見るのだろう。
もし。
もし拒絶ならば。
離れていこうとするならば。
その時は本当に壊してしまおう。
例え何があろうと彼だけは手放したくないから。
壊して自分が居なければ生きられないようにしてしまおう。
でも。
でも拒絶ではなかったら?
受け入れてくれたなら・・・どうしよう。
嬉しい事のはずなのに、何故か拒絶された場合と違って答えが出ない。
其の答えが出る前に、小さな呻きと共に彼の瞼が震える。
ゆっくりと開かれた瞳はぼんやりと天井を見上げていた。
その眼はまだ眠たげで、ゆっくり閉じられては開き、再び閉じる。
それを繰り返す彼の顔をそっと覗き込むと、虚ろな瞳に自分の姿が映る。
そのまま見つめ合う事数分。
キラの口から吐息が洩れる。
唇の動きから、自分の名を呼んでいるのが判る。
涸れ果てた咽からは空気が洩れるような音しか聞こえない。
自分を認識しているかも怪しい状態。
それでも聞こえるのだ。
「アスラン」
と・・・
脳の奥底に痺れが残り、ぼんやりとした意識の中、キラは思う。
きっと気が付いてないのだろうけど、今のアスランは迷子になった小さな子供のようだ。
酷く脅えたような顔をしている。
泣きそうな顔をしている。
彼に向かって手を伸ばそうとするも、根こそぎ体力を消耗させられたのだ。
腕も上げられない。
名前を呼ぼうにも、声が出ない。
瞼はとても重く、意識は今にも闇に沈みそうだ。
闇。
闇は怖くない。
もう一つの自分の居場所。
あの仮初の世界は漆黒の闇に満ちた世界だ。
あの闇に身をゆだねるのは酷く心地よい。
一部の者にしか判らない解放感。
それを彼と共有できると知って嬉しかった。
何かがそっと頬に触れる感触でいつの間にか降りていた瞼を再び押し上げる。
すると驚いた様に、それは引っ込んだ。
見上げるとアスランが気まずげなな顔をしている。
そんな彼の名をもう一度呼ぶ。
相変わらず声は出なかったが、再び彼はその手をおずおずと伸ばしてきた。
優しく頬に触れる手の感触は酷く心地良かった。
自分の手にうっとりとした表情で目を細める彼の様子に心のどこかでほっとする。
拒絶されなかった。
同時に戸惑う。
正直、あんなことをしてしまったのに。
今まで通り振舞う事など出来そうに無くて。
そんな自分の心を見透かしているのか、キラは小さく笑う。
声無き声で、自分を呼ぶ。
その声に。
どう応えたら良いのだろう。
彼は変わらない。
壊れない。
眩しいままだ。
あの紫の瞳が優しく光を弾く。
『真実の瞳』
自分がそう呼ぶ彼の瞳に捕らえられる。
それから逃れるように彼に口付けると舌を挿し入れた。
ぎこちないながら、彼もそれに応えてくれる。
酷く甘いそれに酔いしれながら、更に深く口内を貪る。
糸を引きながらようやく唇を離すと彼の呼吸はすっかり上がっていた。
潤んだ目じりに、額に、頬にそっとキスを落とすと擽ったそうに身じろぐ。
徐々に呼吸が落ち着いてくると、再びキラはまどろみだした。
そっと彼の髪を梳く。
いつしかすっかり眠り込んでしまったキラの寝顔に心が落ち着きを取り戻していることに気が付いた。
拒絶されるなら壊してしまおう。
受け入れられたらどうしよう。
謝るべき?
でもそんな気にはなれなくて・・・
そううろたえていた自分は何処に行ったのやら、と苦笑する。
傍らにある温もりを感じながら、アスランはブランケットを引っ張り出すと自分と彼にかけてその場に身を横たえた。
目を閉じると程なく睡魔が訪れる。
穏やかな寝息がもう一つ増えるのに左程時間は掛からなかった。
ふと目が醒める。
時計を見るとまだ起きだすには早い時間だった。
尤も昨日眠りについた時間は早かったのだが。
それでもまだだるいのは、あの行為の所為だろう。
後々思い出すと、かなり無茶をしていたように思う。
自分ですらこうなのだから、キラは今日一日起きられないかもしれない。
そう思って当のキラを見ると、様子が少々おかしかった。
眉を寄せた顔は苦しげで、呼吸が酷く熱っぽい。
其の様子にアスランは舌打ちした。
あれだけのことをしてしまったのだ。
体調を崩していてもおかしくない。
おそらく脱水症状を引き起こしている。
そっとベットから抜け出す。
勝手知ったる他人の家。
ミネラルウォーターや解熱剤、水を入れた容器とタオルを探し出してくる。
それらを手に、部屋に戻るとベットの上の彼がもぞもぞと動いていた。
どうやら目が醒めたらしい。
部屋に戻ってきたアスランにどこかほっとしたような表情をする。
これだから。
あれだけのことをした自分をまだ必要としてくれている。
それが嬉しくもあり、辛くもあった。
とても手が届かない存在のようで。
首を振って、其の思考を追い払う。
今はキラの身体の方だ。
「薬を持ってきたんだ。
飲めそうか?」
ベッドサイドに膝をついて彼の顔を覗き込む。
熱に浮かされてはいるが、キラはしっかりと頷いた。
其の身体を抱き起こして薬とミネラルウォーターの入ったコップを渡そうとするが、其の腕は力なく落ちてしまう。
そこでそれらを彼に手渡すのは諦めて、自らの口に含み、口移しで流し込んだ。
しっかりと飲み込んだことを確認してから唇を離す。
それから再び彼を寝かせると、濡れたタオルを絞り、額に乗せるとキラは大きく息をはく。
そんな彼の様子に大丈夫か、という言葉を飲み込む。
これは自分の責任。
そんな事を言う資格など、自分には無い。
喩えキラが許してくれたとしても。
「手」
突然そう云われて戸惑うが、言われた通りにそっと手を伸ばす。
キラはその手に頬を押し付けてくる。
「・・・アスランの手。
ひんやりしていて気持ち良い」
そんな彼に苦笑して、それでも両手で其の顔を包み込むように触れる。
彼の熱が、冷えた自分の手に温もりを与えてくれる。
それは静かに心に染み込んだ。
「アスラン」
再び彼が呼ぶ。
「ずっとそばに居てね」
そう微笑む。
「いて・・いいのか?」
声が震える。
「ホントに嫌ならとっくに殴ってるよ、僕は」
まぁ確かにキラは強いけどさ。
「酷いことしたのに・・・」
傷つけたはずなのに。
「でもそれはそれだけ僕の事を想ってくれてたから・・でしょ?」
真実の瞳が自分を捉える。
「それに・・・」
声が優しい。
「アスランなら・・良いんだ・・・アスランなら、どんな事をされても受け入れられる」
だから。
『これからも一緒にいよう・・・』
虚像の翼版では彼らのお初は無理矢理系(爆死)
ウチのアスランは通常白いんですが、暴走すると黒くなります。
人格変わります。
キラを啼かせるのを楽しんでます(死)
キラはキラでアスランのそう言うトコを受け入れちゃってます(笑)
アスランはそんなにも自分を想ってくれてるんだ〜って事で(^^;
自分家では(SEEDのBLは)どこまでもアスキラで突っ走ってくらしいです、自分。
他のCPも好きですけどね。