最近の混乱が嘘であるかのように静かな夜。

以前見つけた深い森に囲まれた水辺。
人も殆ど来ないような場所にマサキはいた。
 
 

振り切ったはずなのに、何かの拍子に思い出す。
それが嫌でがむしゃらに任務をこなす日々。
疲労が溜まっていくのにもかかわらず、夜、眠ることも出来ずにいた。
 

そんな自分を周囲に見せたくなくて、いつも通りに振舞って・・・でも時々一人になりたくなって、今ここにいる。
 
 

元気を取り戻したようで、でもあの時を引きずっているのは自分だけではない。
夜になるとプレシアはぐずりだすことがある。
人前では気丈に振舞ってはいるが、時折緊張の糸が切れたかのように突然泣き出すのだ。
そんなプレシアを放っておくわけにもいかないので普段いつも連れ歩いているファミリアたちを今は置いてきている。
 
 
 
 

木に寄りかかり、目を閉じると、水の音や微かな森の息吹が聞こえる。
ひんやりとした風が疲れた体を包む。
まるで癒されているかのように、心地よい。
 
 

しかしそれも長くは続かず、マサキは何かの気配を感じとる。
・・・ぞくり、と身体が総毛出すほど邪気。

(この・・感覚は・・・!)

かさりと音が聞こえ、振り返った先にいたのはやはり・・・

「・・おやおや・・こんなところに一人で・・無用心ですねぇ・・・マサキ?」
予想通り悠然と現れたのはシュウ・・シュウ=シラカワ。
ゼオルートの仇であり、なにより魔装機神操者として倒さなければならない『敵』。

「・・シュウ・・てめぇ・・なんでこんなところに・・・」
「貴方のプラーナを感じましてね・・・一人とは、都合がいい」
うめくようなマサキの問いに、笑みを浮かべて答えるシュウ。
だが、目は笑ってはいない。
得体の知れない雰囲気を放つその紫闇にマサキは気おされる。
並みの人間ならば、ここでさっさと「回れ右」しているところだが、彼も怯んだままでいるような性格ではない。

「わざわざ俺に会いに来たってのか?・・・ここで決着をつけるつもりかよ」
そう言って身構えるマサキ。
「フッ・・・随分と勇ましいことですね、マサキ・・・」
自然体のまま、しかしまったく隙を見せないままシュウは歩みを止めた。
 

「・・・私を・・殺したいのですか?」
 

唐突な問い。

「・・・さあな」
「おや。魔装機神操者として私を倒すと宣言しておきながら、いまさらなにを迷っているのです?」
「迷ってなんてないさ。てめえは俺の敵だ・・・けど・・・」
「けど?」
 
 

邪悪な気・・・
ルオゾールとも共通する邪気・・・
だが・・違和感があった。
何かがかみ合わない。
ルゾオールと同じ邪気を発していながら、奴とは何かが違う。
 
 

突然顎をつかまれ、引き寄せられる。
考えに没頭してしまったマサキはシュウがすぐそばまで歩み寄って来ていたことに気がつかなかった。
「なっ・・・」

声を出す間もなく、唇を塞がれる。
一瞬何が起こったのか理解できなかったマサキだが、キスをされてることに気がついて慌てて暴れだした。
それに意を介さず舌を絡めるシュウにマサキは反射的に噛み付いた。
「ッ・・・」
小さなうめきと共にシュウが離れる。
その唇には微かな紅。
肩で息をしながら潤んだ瞳で睨みつけるマサキを見やるとにやりと笑った。
「やってくれますね・・・しかし・・・」
言葉と共に木の幹に叩きつけるように押し付けられる。
「くぅッ!」
ふらりとよろめいた隙に両手首をつかまれ、再び唇を奪われる。
今度は先程以上に荒々しいそれに抵抗する間もなく歯を割って侵入してくる舌に口内を蹂躙されていく。

どれくらいそうしていたのか、ようやくシュウが離れるとマサキは彼の腕の中に崩れ落ちた。

「・・シュ・・ゥ・・てめぇ・・どう・ゆ・・う・・・」
「先程、何故ここに私がいるか聞きましたね・・・」

マサキと違ってまったく呼吸の乱れも見せずに悠然と微笑むシュウ。
しかしその微笑には邪悪な影が見え隠れするのを霞む視界にマサキは見た。
 

「・・『贄』・・ですよ・・・」
「に・・ぇ・・?」

「そうです。我が神に捧げる生け贄・・・」

「!?」

「よく高貴な血筋を選ぶことが多いようですけど、そんなのは形式に過ぎません・・・
 真に贄に相応しきは魂の位高き者・・・風の精霊王に選ばれ、しかもその精霊王と一体化・・『精霊憑依』まで果たした貴方は申し分ない『贄』ですよ・・・」

静かに語る紫闇の瞳。
ぞくりと背筋が寒くなる。
底知れぬ闇を見た気がして思わず身震いする。

「じょーだんじゃ・・・・・ぐぅ!?」
そんなものにされてたまるかとばかりにシュウから離れようと暴れるマサキだったが、力の入らない体ではそれも叶わず今度は地面に叩きつけられる。

「っつぅ・・・・・ってぇ・てめぇどこ触ってやがる!!」
シュウの手の感触が布越しに、しかしはっきりと伝わってきて、マサキは顔を赤くする。
「言ったでしょう?貴方を贄にする、と」
「だからなんでこんなことする必要があるんだよっ!」
「フフ・・・判りませんか?」
「判るか!!」
悪い夢でも見ているかのようで、なんだか泣き出したい気分になってマサキは叫んだ。

「簡単なことですよ・・貴方のその真っ白な身も心も汚し、闇へ堕とす・・・貴方の全てを・・・」

まるで『貼り付けた』ような邪悪な笑みを、彼は浮かべた。
「全てを・・闇に・・捧げるのですよ・・・」
 


何書いてるんだろーか、自分・・・(汗)
続きます。一応・・・
一応、ある程度話は出来てるんですけどね・・・
長い上にひたすらヤリまくってるので(ォィ)節操ないっぽいです(死)

追加:
あ、これは時期的に精霊憑依イベントの直後って感じです。
シュウ様に対する憎しみはあのイベントで殆ど消えたと思ってますんで。
あくまで魔装機神操者として倒すべき相手・・・として認識しております。この時点でのウチのマサキは。



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