その日はたまたま休日で、大輔は久しぶりに太一の家に遊びに来ていた。
「なー、大輔。さっきからなんでそんなに機嫌が悪いんだよ?」
「……別に、なんでもないです。」
低めのトーンでそう言った大輔は、目の前にある自分の作ったチャーハンをもくもくと食べつづけていた。
大輔がこんな風になったのにはわけがあった。
それは、30分ほど前にさかのぼる。
大輔が太一の家に来たのがちょうど昼頃というのもあって、大輔はそのまま太一の家で昼食を一緒にとることとなった。
その日は、たまたま母親も妹のヒカリも出かけていて、太一と大輔が2人っきりだった。
「大輔。ラーメン屋目指してるやつが料理の一つくらいできねえとなー」
「な、なんなんですか?」
「お前、なんか作ってくれよ。」
太一の口車に乗せられて、大輔はなぜか太一の家で、昼食を作ることとなってしまった。
さすがにラーメンを作るとまでは無理だったので、1度作ったことのあるチャーハンを作ることにした。
「太一先輩…、できましたよー」
なんとか必死にチャーハンを作って、リビングにそれを運ぶと大輔は目の前に映った光景に思わず動きが止まってしまった。
さっきまでテレビを見ていたはずの太一が、その場で眠ってしまっていたからだ。
(な、なんで寝てるんだ!?)
大輔は手に持っているお皿をお盆ごとテーブルにおいて、太一の隣に立った。
(そういえば、太一先輩、昨日も部活でつかれてたんだよな。)
一瞬、起こそうと思ったのだが、太一があまりに気持ち良さそうに眠っていたので大輔はそのまま太一の顔を覗き込んだ。
(そういえば、太一さんの寝顔って、久しぶりに見たかも。)
めったに見れない太一の寝顔を、大輔が嬉しそうに見続けているといきなり、太一が自分の腕をがしっとつかんできた。
「え!?」
驚いて太一を見ると、太一が眠そうに目を細めながら自分をじっと見ている。
「た、太一先輩、起きてたんですか…?」
大輔の言葉にも何も答えず、太一はそのまま大輔をぎゅっと抱きしめた。
「!!??……た、太一先輩!?」
太一の行動に驚いて、大輔は太一を引き剥がそうとするが、太一は一向に抱きしめてる腕を離そうとしてくれない。
しかも、太一が上からのしかかってくるような体勢だったため大輔はそのまま太一を支えきれず、床へと倒れ込んだ。
「…いってえ…、って太一先輩、いいかげん離れて下さいよ!」
床に押し倒されて、さらに体全体で押さえつけられているため、大輔がいくら太一を引き剥がそうと体を押しても、びくともしなかった。
唯でさえこんな体勢なのに、自分の顔のすぐわきに太一の顔があって大輔は自分の心臓の音が急激にはなくなるのを感じた。
(うわーっっ、なんか、すげーはずかしいかも…)
「た、太一先輩……って、あれ?」
先ほどから何度呼んでも全く反応しない太一の様子に、大輔は首をかしげた。
一度動きを止めて、太一の様子をうかがうと、なにやら、すーすーと気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。
(もしかして、先輩寝てるのか??)
呆れながらも、どうにかして太一を退かそうと試みるが、相変わらず重くて動かせない。
そのうち、観念したのか、大輔はゆっくりと太一の首に腕を回した。
(…なんか、太一先輩、あったかい…)
「ただいま〜」
その時突然、玄関のドアが開き、ヒカリが中へ入っていた。
それとほぼ同時くらいに、ドガタンっとものすごい物音がした。
ヒカリがなんだろうと思って、部屋の中を見ると、そこに大輔の姿とそしてちょっと離れた所に、太一の姿が見えた。
「…ヒ、ヒカリちゃん。早かったね。」
顔を真っ赤にしながら、ちょっと裏返った声で大輔はそう言った。
大輔が太一の家に来た時にヒカリはまだ家にいて、その時どこかに出かけるから夕方まで戻らないという事を聞いていた。
「あ、ううん。ちょっと忘れ物して取りにきたんだけど…大輔君、どうかしかの?顔が真っ赤だけど…」
大輔の様子に、自分の部屋に向かいながらヒカリが首をかしげた。
「え!?な、なんでもないよ!」
さすがに、今まで何をしていたかなんてとてもいえるわけがない。
「そう?……じゃあ、私もう行くから、ごゆっくりね。」
「う、うん。」
忘れ物をちゃんと鞄に入れて、ヒカリはそのまま自宅を後にした。
バタン、と玄関のドアが閉まる音がして、大輔はようやくほっと溜息をついた。
「…なんか、後頭部がいてえんだけど…」
そのドアの音で目が覚めたのか、太一が大輔に突き飛ばされた拍子にぶつけたらしい後頭部を痛そうにさすっていた。
「……ようやく起きたんっすか。」
大輔がそんな太一に冷たい視線を向ける。
(なんて鈍いんだ、この人は…。)
「…今、誰か来てなかったか?」
「ヒカリちゃんっすよ。忘れ物取りに来てすぐ出て行きました。」
(もうちょっとでヒカリちゃんに見られるとことだったんだからなー!!)
心の中でそう叫びながら、大輔は太一を睨みつけた。
「先輩、お昼冷めちゃいますから、早く食べましょう。」
刺すようにそう言い、大輔はそのまま勢いよく立ち上がって椅子に座った。
「…?あ、ああ。せっかくお前が作ってくれたんだしな。」
「…で、なんで怒ってるんだ?」
「…だから怒ってませんよ。」
「俺がお前ほったらかして眠っちまってたからか?」
太一には、大輔が怒っている理由が今のところそれしか思い当たらない。
「…そんなことは、関係ないっす。」
「…じゃあなんなんだよ?」
「だから、何でもないって言ってるじゃないですか!!」
大輔はむすっとしたまま太一を見た。
「………。」
「………。」
そんな大輔の様子に、最初は溜息をついてしばらく考えこんでいた太一だったがなにかを思いついたらしく、微笑みながら大輔を見た。
「………なあ、大輔。」
「なんですか?」
その太一の笑顔に、ちょっと嫌な予感を感じながら大輔はちらっと太一を見た。
「…しよっか?」
「………………………………は?」
「だから、しようぜ?」
にっこりと微笑みながらとんでもない事を言い出す太一に大輔は思わず顔を真っ赤にさせた。
「い、いきなり何言ってるんですかっ!!??」
そして、ガタっと今にも椅子を倒しそうな勢いで立ち上がる。
「別に怒ってないんだろ?だったらいいじゃん。」
「怒ってないとか、そういう問題じゃないです!!」
「いいだろ?別に。」
「よくないですっ!!ヒカリちゃんがまた戻ってきたらどうするんですか!?」
ついさっき、ヒカリに見られそうになったのに、また戻ってきたら今度こそ本当に見られる。
「大丈夫だって。忘れ物は持ってったんだろ?」
太一はそんな事はお構いなしの様子だった。
「と、とにかく俺はやです。唯でさえさっきヒカリちゃんに見られそうになったのに…」
ぼそっと独り言のようにつぶやいた大輔に太一は首をかしげた。
「…?見られたって、……お前、俺の事襲ってたりでもしたのか?」
そしてその後、意地の悪い微笑みをする。
「太一先輩が寝ぼけて俺を押し倒したんじゃないですかっ!!!」
真っ赤になりながら、大輔はそう叫んだ。
「…なんだ、それでさっきから機嫌悪かったのか。じゃあ、なおさらヤろうぜ。そうすりゃお前の機嫌も直るだろ?」
相変わらず微笑みながら、太一は椅子から立ちあがって、大輔へと近づいた。
「な、なんでそんなんで機嫌なおらなきゃならないんですか!?」
大輔はそのまま後ずさりをする。
「……だって、さっきからお前がまんしてんじゃん。」
「〜〜っ!!!???」
それはさっき、大輔が太一に上からのしかかられてた時、太一の寝息を耳元で感じてしまったからだ。
そんなことで感じてしまっている自分が恥ずかしくて、なんとか隠していたのに太一はそれをあっさりと見破った。
「体の欲求には、素直に従った方がいいぜ?」
顔を真っ赤にしながら下を向く大輔の頬に、太一は優しく手をあてた。
「た、たいちせんぱいの、ばか…」
「そういうなまいきな口は、今すぐ聞けないようにしてやるよ。」
そのまま、ゆっくりと顔を近づけていき、太一は奪うように大輔にキスをした。
「んんっ…」
観念したのか、大輔はそのまま太一の背中に手を回していた。
「た、たいちせんぱい…まだチャーハン残ってますよ?」
「…冷めちまったら、後で俺が、まとめて食ってやるよ。」
「……おれの、分は?」
「お前は食われる側。」
「…俺が、つくったのに…」
その後、すっかり冷めきった大輔の作ったチャーハンは太一によって全てたいらげられた。
おわり。
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コメント
お待たせしました〜!!
裏1400リクってことで、がんばってみたんですがギャグに逃げました!(爆死)
裏リクなのに表と変わらないだろ!とか怒られそうですが(汗)
ああ、しかもなんだかかなりバカップル(笑)
余談ですが、ヒカリは気づいてます(笑)
没ネタでヒカリが「ごめんね、おじゃましちゃって」というセリフがあったりしました。
では、こんなのですがどうぞお受け取り下さいvv
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管理人より
リクエルト、叶えていただいて嬉しいです〜v
いや〜やっぱ、大輔は太一に敵いませんね!(笑)
でも最強はヒカリ(爆笑)
ともあれありがとうございました♪
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