コラム(本紙 「小窓」より)

子供の夢と2024年問題

 経済産業省の資料によれば、Eコマースの市場が21兆円に達するのも目前である。また、JADMA(日本通信販売協会)のよると、通販市場は12兆円を超えそうな勢いである。
 そのような中、物流業界では「2024年問題」が浮上している。
 周知の通り、「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることよって発生する数々の問題のことだ。
労働力不足の中、現在のEC市場、通販市場の急成長により、ドライバーの長時間労働は当たり前となっていた。
来年度、それら労働時間が制限されることで、荷物が届かなくなるということ、運送・物流業者の売上、利益が減少するということ、働く人の給与も減少するということの3点が懸念されている。
 なぜこのような状態になるまで、放置されたのかは様々な議論があるが、「翌日届く」「無料で届く」をコンセプトに、多くの企業が競争したこと。生活者もそれを当然と考えECを利用したことが最大の原因と言えるだろう。
しかし、思えば、このような問題は物流業界に限ったことではない。かつては、工場の現場でも、コンビニエンスストアの現場でも、あるいはタクシーや、ツアーバスのドライバー等でも、長時間労働の問題があり、時には大きな社会問題になっていた。
結局、企業が利益を、そして生活者が利便性や低コストで求める環境では、いつもそれらを支える裏方が苦労している。特に高齢化が進んでいる日本では、「現場で働ける元気な人」に大きなしわ寄せがくることが当たり前となっているようだ。
 子供の時にテレビで見た、アニメの中では、車は空を飛び、食べ物はすべて配送されて各家庭に届いていた。ある意味、ドローンが空を飛び、ECで食材が届くのだから、今の社会は、その状態に近くなったと言える。しかし、アニメに中では、それらを支える人たちの苦労は表現されていなかった。成長する社会や経済の反対側には、大勢の裏方が存在するということを。



(2023/06 IKKO YONEI@nihonbashi)



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