コラム(本紙 「小窓」より)

地域と工場

 東京の中心地域には皇居がある。そこには武蔵国豊嶋郡江戸に500年以上前に建築された江戸城があった。その城を中心にして環状6号、7号、8号、外環道路、圏央道等が同心円上に並んでいる。さらに甲州街道、中山道、日光街道、奥州街道、東海道が江戸城側の日本橋から放射線状に伸び、名古屋、大阪、仙台などの日本全国の都市と結びついている。我々は今なお、数百年以上前に作られたインフラを利用して生活し、流通・物流活動を行っている。

 それぞれの街道を辿った先には地方があり、地域が存在する。そこにはこのインフラ以上に深い歴史がある。独自の地形、気候があり、特産品があり、方言がある。今なお地域によって大きな差異があり、インターネットがどれだけ発達しようともその差異は埋まらない。香川にはうまいうどんがあり、岩手には蕎麦がある。広島にはお好み焼きがあり、北海道にはジンギスカンがある。東京と大阪の醤油の色は明らかに違う。九州の人にとって酢は当たり前だが、東北の人には今なお馴染みがない。東京と神戸では高校生のスカートの長さも違う。

 そんな地方、地域の良さに、様々な人、企業が気づき始めた。道の駅はいつも混雑しているし、47都道府県別の大手企業のビールは人気である。タモリはTV番組の中で全国各地を訪れ、その地域の地形や歴史を紹介する。バスに乗ったタレントが北海道から九州まで旅をする。

 様々な製紙、製袋会社の取材を通し、福島、滋賀、埼玉、長野等の工場を拝見した。それぞれがその地域の製品を作り地域の雇用を生み、時には地域の小・中学生などの社会教育にも貢献している。工場はまさしく地域とともに歩んでいる。
4年後のオリンピックを前にして、今なお厳しい時代が続く。しかし、日本の紙、袋が今後もしっかりと残っていくためには、今後も地域社会への貢献、地域の顧客との連携・連動が必要不可欠である。そして「この県のこの工場で作った製品は、他の国、他の工場jの製品と○○が違います」と言い切れる強さ≠ェ、最も必要とされることであろう。(2016/09/05 Ikko Yonei)



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