コラム(本紙 「小窓」より)

小窓 違法伐採でないものを選ぶ

 東京五輪の新エンブレムが決定した。2020年には海外からの旅行者も増え、大きなビジネスチャンスと期待されている。包装資材などでも引き合いが増加するだろう。ただ気にしなければならないこともある。東京五輪で組織委員会が調達する建物、ライセンスグッズなどには、違法伐採木材や紛争鉱物が排除されるという。具体的な原材料の調達コードはこれから発表されるようだが、包装資材では紙の原料が熱帯雨林を伐採した木材パルプでないことや、設備の金属には紛争国の資金源になってしまう可能性のある鉱物=コルタン(タンタル鉱石)、錫(すず)石、金やそれらの派生物を使用しない、ということだ。調達の際には、その原材料が、どこで採取され、どのように供給され、確かにそうかという履歴の提供が求められていくことになる。

  これまで日本では、特に木材や紙を使用する側が問題を認識できておらず、違法リスクの高い木材が輸入・使用されている割合が高いと言われてきた。そのような中でも、製紙業界は着実に原料木材と流通経路も含めて違法伐採でない紙を供給できる体制を整えている。例えば、FSCR =森林管理協議会は、木材を生産する世界の森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工のプロセスを「認証」する国際機関で、その認証は、森林の環境保全をはじめ社会的、経済的にも継続可能な形で生産された木材に与えられる。このFSCのマークが入った製品を選択すると世界の森林保全を間接的に応援できる仕組みとなっている。このような認証紙を使ったものがじわりと広がってきている。例えば、ファッションブランドの紙箱や包装紙、製品タグ、大手企業の名刺や封筒、印刷物などだ。

  冒頭のとおり、五輪委員会や大手企業といった購買する側がこの問題への対応を推進しはじめた。紙の供給元もその体制を整えている。あとは、供給と購買の間にある加工メーカーがどう対応するかで、取引できるかが決まってくる。
ちなみにレンゴーは、自社のすべての段ボール・紙器工場と段ボールの原材料になる原紙の製造工場で、日本製紙グループは紙パック事業の各拠点でFSCR 認証を取得している。

 Y.Y 2016/0501



NEXT

ライン