◆ 環境リスク論


 
ジャンル: 環境

著者:  中西 準子

出版社:  岩波書店

本体価格: 2300円

発行年月: 1995/10/26 

判型: 単行本

ページ数: 216P

ISBN 4-00-002818-9


 


 今に始まったことではないが、マスコミによる環境問題に関わる報道には 問題があると言わざるをえない。ある科学的事実を取り上げ、センセーショナルに 報道することにより、その原因を徹底的に悪者にし、社会に対して訴える。 善良な一般市民はこれらの報道をそのまま受けとめ、市民運動を展開することにもなる。 あるリスクを完全にゼロにしようとすると、それに伴い別の所で違う種類の大きな環境問題 を引き起こしてしまうこともあるのである。

 本書では自然環境保護のような意見の違いが著しい問題に対して、お互いの議論の 是非を論ずるだけでなく、統一的な政策を出して行く方法論を議論する際に、 有効なものとしてリスク論が有効であると考えている。 著者は自身のリスク論の中で、リスクは必ずあるもので、ある程度は許容せざるを得ない という立場に立っている。そしてリスク管理の原則として「リスク・ベネフィット原則」 を取り入れている。

 リスクを受け入れるかわりにもたらされるベネフィット(利益)。また逆に リスクを削減することにより消失してしまうベネフィット。リスク管理はこの バランスを考慮して決定しなければならない。本の中では具体的な例を幾つも あげてリスク管理、環境政策のあり方について議論している。

 環境問題に関心があります、と漠然と言う前にまずは読んで頂きたい本である。