HIKAのゲーム備忘録
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ゲームサイトと著作権 −「引用」の可能性と法−

(おことわり)
■このページに記された内容は、伝聞の部分も含め、全てHIKAに文責があります。
■また、このページに記された内容は、あくまでも判断材料のひとつに過ぎません。このページの内容によって生じたいかなる件について、こちらでは責任を持ちません。
 以上承知した上でお読みください。


はじめに

 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
(「著作権法 」第三十二条)

 最初は素朴な疑問だった。
「このサイトで紹介したゲームや書籍について、例えば表紙を画像の形で紹介できるのだろうか」
この問いかけから、BBSで何度かの議論が交わすことができた。その結果、議論の方向は、「著作権を法的にどう解釈するか」というものになったと思う。そうなると素人の憶測だけで判断するには荷が重すぎる。

 ここまで来ると、もはや著作権についての専門家に話を伺うしかない。そこで、(社)著作権情報センター内にある「著作権テレホンガイド」に直接電話して質問してみることにした。いや、けっこう無鉄砲な人間なんです。

質問の大枠としては、以下の3点
 ・書評やゲーム紹介に、対象のパッケージ画像を引用することができるのか。
 ・それとは別に、ゲーム評論内で画像を引用することはできるのか。
 ・ネット上への掲示(デジタル情報)ということで、特に注意する点はあるのか。

について尋ねることにした。

 以下、質疑応答の要約を紹介。

※このページで使われている「引用」という語は、「著作権者への許諾を経ずして、その著作物を表示すること」を指している。許諾を受ければ議論の大半が不要になることについては、特に断る必要はないだろう。


パッケージ画像使用の可否

──インターネットのホームページで、TVゲームの評論と関連書籍の書評をしている者です。ゲームのパッケージや書籍の表紙の画像を、紹介記事に添える形でネット上に掲載することはできるのでしょうか?
「著作権上は、パッケージあるいは表紙に文字だけが記載されている場合は可能です。それ以外のイラストや写真が入った場合は、無断での掲載は認められません。」

──つまり、デザインの有無が問題ということですか?
「そうなりますね。六法全書といった文字だけの固い本なら表紙の掲載も可能でしょう。文字だけの背表紙も大丈夫です。ですが、表紙に絵がある絵本、タレント写真が大きく写った週刊誌となると、著作権の上では問題が出てきます。」

──新聞や雑誌の書評欄では、表紙写真の掲載に際して特に著作権表記はありませんが・・・・
「それでも許可を取っているでしょう。」

──そうは見えないのですが
「出版社の側が宣伝と思っているのであれば、特に問題にしないということではないですか。」

──公正な慣行の範疇だと
「そうなるんでしょうかね。」

 この説明によると、このサイトではゲーム、書籍ともどもパッケージの「許可なき」掲載は現時点ではムリ。紹介書籍はビジュアルを凝ったものばかりだし。ソフトハウスや出版社の側が宣伝と思ってくれればいいのだが、そういった善意にすがるのは楽観的に過ぎるだろう。こちらとしては、表紙やパッケージといった「その作品の顔」については、紹介記事での掲載を容認するような文化(?)ができればとは思う。

 ところで、文字情報だけなら無断でも掲載できるとなると、例えば書籍風のパッケージである「Refrain Blue」(1999、elf)なら大丈夫となりそうだ。とはいえ、「書籍”風”の表紙をデザインした」と言われれば反論するのが大変にも見える(レタリングのデザイン性をどう考えるかについては、質問することを思い至らなかった)。ビジュアル情報を前面に押し出しているゲームという媒体を取り上げることの難しさだろう。



ゲーム評論における画像の引用について

──ゲームを評論する際、ゲーム内の画像が評論と不可分と判断した場合には、画像を引用することは可能でしょうか?
「画像と評論とが本当に不可分であると信じているのならば構わないとは思いますが・・・・これについては法律も抽象的な記述しかないので何とも言えないですね。」
「実際、引用の妥当性という件だけで一年中裁判が行われている状態です。”主従関係”、”明瞭区別性”、”出所表記の有無”といった厳密な条件を問われることになります。」

──そうすると、そういった厳密な条件を満たせると判断できれば画像の引用は可能なのですか?
「ところがそう簡単でもないんです。今まで、『引用には絵を含めない』という説が主流だった時代があったんです。実際、小学館が美術評論を刊行する際に、著作権法上の違反に問われるという判例がありました。」
「最近は事情が変わってきました。漫画家の小林よしのりさんが、自身のマンガを無断で引用した本について争ったところ敗訴したということがあります・・・・まだ確定したわけではありませんけれど。」
「結局のところ、御自身の判断に任せるとしか言えません。」

 これは予想範囲内の回答だった。「ゲームはビジュアルの中に物語性を入れるだけに、単純なイラストとは一線を画すのでは?」と質問したものの、それについても「御自身の判断に任せる」以上の話は出てこなかった。

 曖昧な答しか出ない背景としては、引用という行為が個別的であることと、その可否の判断が著作権者による恣意的な部分に委ねられていることがありそうだ(著作権関係の係争は、基本的に親告罪)。引用に絵を想定してこなかったという歴史的な事情も関係しそうだ。これについては、適当な判例が出てくるのを待つしかないのだろう。



デジタル情報としての引用

──ネット上に画像を引用する場合、デジタル情報ということから特別な配慮をする必要はあるのですか?
「それについては全くありません。ペーパーベースの引用と同列に考えて結構です」
「例えばデジタル画像は圧縮したりできますね。かといって──分からないほどに圧縮すれば別でしょうけれども──著作権上の扱いが変わることはないでしょう」

──要は、「引用した事実」が問われると?
「その通りです」

 やや意外だったが、考えてみれば妥当な話だった。複製が容易なデジタル媒体であっても、それが引用という正当(と書き手が信じる)理由があれば、小手先の配慮は無用という原則論が貫かれるということだろう。もちろん、ペーパーベース同様に縮小などの配慮をしてもいいとは思う。



まとめ

 以上が質問の内容だった。電話口からは、丁寧に、それでいて聞き手の曖昧な部分を逃さない毅然とした態度を感じることができた。細かい事例や用語をさっと出すところが専門家たる所以だろう。「TVゲームのサイト」ということで「ドラクエとか」と例を出されていたが・・・・きちんと言った方が良かったのかな?

 結果としては「パッケージ掲載は慣行の範囲」と考えていたこちらが甘かったということになりそうだ。反面、ゲーム評論と画面引用との関係については、評論する側の意志によっては多少の自由度が得られそうだとも感じた。ただし、相応の責任が付いて回ることを覚悟した上での話ではある。

 現在、多くのソフトハウスでは、特に画像素材の引用についてガイドラインを設定している。そこで意図しているのは、いわゆるファンサイト的な紹介記事での使用だろう。実際、その限りでは多くのガイドラインは適切な妥協点を示せていると思う。
 ここで引用の可否にこだわったのは、今後増えるであろう「批評」「研究」といったジャンルでは、同時に引用についての方法論が問われだろうと感じたことがある。ここでは曖昧な状態を再確認するに留まったが、今後につながる議論が起こることを願いたい。

 好きなことを語って無用な争いを引き起こすことほど、悲しいことはないのだから。


謝辞

 このページの作成については、BBSにて実りある議論を作ってくれたkenさん(X-GAME STATION)、素人の疑問に対して丁寧な回答をしてくださった(社)著作権情報センターの相談員の方に多くの示唆を頂いています。心から御礼申し上げます。


(記)
 2000年11月27日
 2000年12月17日 加筆修正、レイアウト修正
 2002年03月19日 レイアウト変更、加筆修正
 2002年12月01日 レイアウト変更
 2002年12月02日 レイアウト変更(文字色)

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