2005年5月7日(土)毎日新聞(夕刊/全国版)
『見る写真 読む写真』(eye)に掲載された文章と写真をご紹介します。
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大海原で「競演」 かつてはイルカ漁でにぎわった静岡県伊東沖で、イルカウォッチングに人気が集まっている。大きなクジラやジャンプするイルカの群れが船に近づき、見物客の歓声に包まれることも。 |
イルカで和もう 〜大海原を優雅に ウォッチング人気〜 「わー凄い!・・・・・・でっかーい!」。イルカウォッチングの船上は家族連れらの大歓声に包まれた。イルカ漁の地として有名な静岡県伊東市富戸の約4`沖で、活発にジャンプするカマイルカの群れと、体長10bを超える2頭の巨大なマッコウクジラに遭遇した。船を操る石井泉さん(56)も思わず目を細めた。 イルカと人間の共存を訴える「イルカの輪」が広がっている。その中心が元イルカ漁師の石井さんだ。石井さんは96年のイルカ漁で、国が定めた捕獲枠を超えて捕ってしまった違反操業を、「正々堂々とイルカ漁を続けるため」に告発したものの、周りから「違反は無かった」ことにされ失望。きっぱりイルカ漁から撤退した。そして、「漁師にとっては捕る利益よりも見せる利益の方がはるかに大きい」と始めたウォッチングは今年で3年目を迎える。それにしても人はなぜイルカに会うと訳もなくうれしくなるのだろう。かく言う私も、91年、ハワイ島沖で初めて野生イルカと共に泳ぎ、魅せられてしまった一人だ。 船から眺める「ウォッチング」は誰でも安心してイルカとの出会いを楽しむことが出きる。ただ、相手は野生だけに必ず会える保証はない。石井さんは「それが野生動物。お手軽に会おうとするのは人間の思い上がりだ」と一蹴(いっしゅう)する。野生イルカと接していると、本来、大海原で自由に生きているイルカを狭いプールに閉じ込め、芸をさせるのは、極めて不自然なことだと理解できる。「人間が全ての中心であり、自然をも管理・支配できる」という偽った認識のために、どれだけの環境が破壊され、動物が虐待されてきたことだろう。 21世紀は「地球の世紀」と言われる。地球環境をもっと大切にしたい。私にとっては、そんな時代の象徴こそがイルカなのである。 |
日本のイルカ漁: イルカ漁の形態は2種類。群れを湾に追い込んで捕獲する「追い込み漁」では、主に和歌山県太地町で年間1219頭(01年度、この年富戸では漁なし)。銛(もり)で一頭ずつ突いて捕獲する「つきんぼ漁」では、岩手県大槌町などを母港に、三陸沖やオホーツク海などで、年間1万6985頭(01年度)のイルカが水揚げされている。水族館やイルカセラピー向けのイルカが、同時に仲間が殺される「追いこみ漁」で捕獲されていることはあまり知られていない。 |
イルカとクジラ: イルカとクジラは「鯨類」として分類される同じ種。体長1.5bのネズミイルカから25bのシロナガスクジラまで約80種あり、更に歯クジラ類と髭(ひげ)クジラ類に分かれる。そして、一般的には体長が4bを境に、大きい方をクジラ、小さい方をクジラと呼ぶ。 |
![]() 自然の中でのイルカの跳躍を目の当たりにするだけで、人々は感動し和む |
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![]() イルカウォッチングを始めた石井泉さん。作家、写真家、地元FM局パーソナリティーなど多彩な顔を持つ漁師だ |
![]() 最盛期、富戸では年間9000頭近くのイルカが水揚げされた=63年、石井泉さん写す、 |
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5年ぶりに行なわれた昨年11月のイルカ漁。 水族館に14頭が送られ5頭が食用に、4頭が廃棄処分にされたという |
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