リチャード・オバリー氏 来日報告

2003年9月1日に来日した、「イルカ救済のスペシャリスト」リチャード・オバリー氏は、日本でのスケジュールを無事に終え、11日に帰国致しました。氏来日にあたって、様々な側面から応援してくださったたくさんの皆様に感謝致します。大変遅くなりましたが、氏来日中の、各地での様子を簡単にご紹介させていただきます。


9月1日
 成田到着(フロリダから、約20時間の旅)

9月2日 朝8時、スタッフと共にレンタカーにて富戸へ出発。
13時、イルカ漁の現場、富戸で「イルカ&ネーチャーウォッチング」を始めた、元イルカ漁師で「光海丸」船長、石井泉氏と対面。2日、3日共、石井氏の良き理解者である先輩漁師の「秀丸」さんも船を出してくれました。まず最初に、石井氏からウォッチングの際の注意事項の説明を受け、ご参加いただいた約20名の方々と共に、約3時間のウォッチングをしました。残念ながらイルカには遭遇できませんでしたが、下船後富戸港で、オバリー氏は石井氏への応援メッセージと、イルカウォッチングの意義について話をしてくれました。「イルカには直接会えなかったが、彼らは確かにそこにいた。そのことを感じることもウォッチングの大切な目的なのだ」と語ってくれたのが印象的でした。

9月3日 午前中、伊東市内にあるイルカと泳げる施設「ドルフィンファンタジー」を視察。現在1頭だけになったイルカとお客さんで来た子供達との様子を見ることができました。船の停泊地に生簀があるため、水質が心配だと感想を述べていました。その後、石井氏と昼食を共にし、親交を深めました。
13時、再び富戸で「イルカウォッチング」、この日も約20名が参加してくださいました。海上は大変霧が濃く、イルカには遭遇できませんでしたが、(1名の方だけ、マッコウクジラの潜水の瞬間を目撃したそうです)霧が立ち込める幻想的な水面に海亀を見たり、数種類の海鳥を観察することが出来ました。下船後も、港で参加された皆さんとお話したり、写真を撮ったりと、楽しいひとときを過ごしました。
夜、地元FM局で石井 泉氏がナビゲーターを務める1時間番組の収録に参加、イルカ捕獲反対を訴えました。番組には、伊東市議会議員の稲葉知章氏、エルザ自然保護の会の辺見 栄氏も加わり、稲葉氏は地元城ヶ崎の松ノ木やイワツバメの保護を、辺見氏はイルカ捕獲反対を訴えました。(このメンバーは、10月、サンフランシスコで行なわれたイルカの保護を訴える会議「サニーサミット」にも出席しました)

9月4日 名古屋へ移動。車の中でやっとゆっくり話す時間ができ、以前から疑問に思っていたことを尋ねてみました。日本語版にもなった(現在は絶版)オバリー氏の著書「イルカがほほ笑む日」の前書きの最後の部分に「…私はたいていのイルカ専門家が考えているように、(1)できるかぎり自然な生態に近い状態でとり扱うこと。(2)野生のイルカの実態をわれわれに伝えるのに役立つこと。このふたつの条件が満たされるなら、数頭のイルカを飼うことは許されると思っている」という部分について真偽を確認したところ、編集側が勝手に加えたもので、彼の考えではないという事実が判明しました。
夜、名古屋市内の水野なな子さん主宰の「かろあん」という日本家屋のギャラリーで「ビデオとお話の会」を行ないました。周辺各地から約30名の方々が参加、日本のイルカ漁で年間2万頭が殺されていることを初めて知ったという方が多く、リリースを訴えるオバリー氏の話とあいまって、充実した時間となりました。小・中学生の参加もあり、まだ日本語に翻訳されていない、オバリー氏の英語版の著書を購入し、「読めるように英語を覚える!」と言っていた姿に感激してしまいました。

9月5日 名古屋から豊橋へ移動。宿泊先となった「ラグナマリーナ」の所長さんに船を出していただき、スナメリが棲む、三河湾の視察をしました。夜は豊橋でコーディネートをしていただいた「三河湾大好き」の服部さんをはじめ、お友達の方々が集まり、バーベキューをしていただきました。オバリー氏も大変リラックスした様子でした。

9月6日 朝9時、豊橋市立前芝小学校にて、小学生全員(約200名)を前に、2時間の講演会を行ないました。服部さんの司会進行でスタートした会は、前半は坂野がイルカのぬいぐるみを使って「イルカの基礎知識」を解説。ビデオを上映し、日本のイルカと人間の関係について説明しました。その後、服部さんの解説と共にオバリー氏のビデオを上映。後半はオバリー氏がスライドを使って、イルカのリリースの話をしました。子供達の反応は早く、講演会後の感想文には「水族館のイルカは可哀相」という内容が多く見られました。オバリー氏自身、子供達に講演会という形で直接話をした経験はほとんど無かったということで、大変感激していました。

9月7日 昼過ぎより、京都「玉龍院」(気とイルカのヒーリングセンター)にてお話の会を行ないました。約10名の方々が熱心に、正に膝と膝をつき合わせて、オバリー氏の話を聞き、意見交換することが出来ました。「今まで水族館は教育施設だと思っていたが、イルカの立場になってみたら、とんでもない間違いだったことに気づいた」と語ってくれた方もいました。夜、新幹線にて東京へ移動。

9月8日 各地で話題になっていた「ヤスを刺されたイルカ」の様子を見に行くために、急遽、イルカが保護されて いる「八景島シーパラダイス」へ向かいました。学芸員の方が対応してくださり、保護されているプールを見ることができました。イルカは病気がちのユメゴンドウの子供と一緒に治療用のプールに入れられており、オバリー氏は「プールが狭い」点と、「日差しを遮るひさしが無いこと」を指摘していました。水族館側の説明によれば、傷の治療にしばらく時間がかかること、リリースについては、また悪戯をされる恐れもあり、慎重に考えたいとのことでした。

9月9日 昼過ぎ近く、新聞数社のインタビューを受けた後、夜、代々木で「シンポジウム」に望みました。シンポジウムには、全国から100名以上の方々が参加してくださいました。進行役は坂野が担当、最初に日本でのイルカ保護のパイオニアである藤原英司氏が、ここ40年の日本におけるイルカを取り巻く環境の変化を報告。続いて、富戸でイルカウォッチングを始めた元イルカ漁師、石井 泉氏がイルカ漁を止めてウォッチングを始めた経緯を説明した後、「私は全てのイルカの捕獲に反対する」と宣言し、喝采を浴びました。後半は、オバリー氏が50枚ちかくのスライドを見せながら、ニカラグア、グァテマラ、ブラジルでのイルカ野生リリースの実際を詳しくレクチャーしました。中南米でも「イルカセラピー」のためと称して、イルカを無理やり捕獲している事件は、最近日本でも話題になっている“イルカの癒し”が世界的に広まっている現象といえます。質疑応答の後、終了となりました。もっとゆっくり「サークリット」からの取材報告などもしたかったのですが、時間が押してしまい、割愛いたしました。また、会場の時間の関係で、終演後バタバタしてしまい大変失礼致しました。椅子の片付け等のお手伝いをしていただいた皆様、本当にありがとうございました。

9月10日 新聞、雑誌のインタビューの後、夜、原宿で「マーク・バーマン講演会」(参加者約50名)を開催。オルカの「ケイコ」のお話をしてくださいました。(ケイコが2003年12月12日、急性肺炎のため死亡したという情報が入ってきました。本当に残念です。 ご冥福をお祈りいたします)
 
会の後は、お二人を囲んで、ささやかな「お別れパーティー」を行ないました。手作りのベジタリアンフードをいただきながら、参加してくださった皆さんと、自由にお話ししていただきました。

9月11日 夜、成田空港より帰国致しました。
1日の来日以来、過密スケジュールをこなしてくれたオバリー氏に心から感謝致します。
今回の「ウォッチング&シンポジウム」にご協力をいただいた「NPOパパラギ“海と自然の教室”」のホームページの『最近のニュース』(No.22)に「人間とイルカのより良い関係について考える」と題したイベント報告が紹介されています。是非ご覧ください!

このサイトはご覧いただくモニターの表示設定で文字の大きさが変わります。見づらい場合は、モニター画面の表示から文字のサイズを中に変更してご覧ください。
当サイトの内容・写真の無断転載、無断使用を固くお断りいたします。
Copyright©2003CIRCLETAllRightsReserved
     

ウォッチングの説明をする石井氏(右)
中央はオバリー氏

石井氏を撮影するオバリー氏

親交を深めるお二人

名古屋「かろあん」にて

イルカを探す石井氏とオバリー氏

大変遅くなりました。イベント報告です!

前芝小学校で話をするオバリー氏

子供達と交流するオバリー氏

東京でのシンポジウム風景

左より、石井氏、オバリー氏、藤原氏  

 マーク・バーマン氏