The Word of Poropose

 

 

 

第13話「異星人を撃て」

ソロシップ機関部

パネルを開けて中を調べている機間士達

一緒になって調べているカーシャ

カ「ねえ、そっちの集積回路の具合はどう?」

機間士「異常はないみたいだ」

カ「そう…まだまだ複雑で判りにくいところが沢山あるわね」

カップケースを持ち、入って来るカララ

カラ「皆さん、お疲れさま」  振り向く一同

カラ「少し休んで、お茶にしたら」

と、コーヒーカップを取り出す

機「うわッ、ありがてえ!」

カ「待って!まだ休憩時間じゃないわ」

機「なんだよ、カーシャ、固いこと言うなよ」

機間士たち「そうだ、そうだ」

カ「(キッとなるが)……」

カラ「ミルクを入れる人は言ってくださいね」

「俺入れる、たっぷりね」  「うわっ、あチチチ………」

「こいつはうめえや!」

嬉々とする機間士たち。

カ「カララ」  カラ「はい、どうぞ」

と、カップを差し出す

カ「コーヒー誰に頼まれたの?」  カラ「私が自分で持ってきました」

カ「勝手なことしないで!」  カラ「・・…・…」

 

 

同・農園

コ「カララのことだ」   ベ「ん?!」

コ「自由にしてやったら、頭に乗って、どこにでも出入りしている。放っといていいのか?」

シ「乗組員たちも大部動揺しているわ」

ベ「動揺?!どういうことだ?」

シ「男の人達が特別の興味を持ってカララを見ているのよ。前に比べると作業の遅れがはなはだしいわ」

コ「ベス、何故、また、やっかい者をしょい込むようなことをしたんだ!」

ベ「それは何度も言ったはずだ」  コ「・…・・」

一同を黙って見つめるロッタ

ベ「カララは自分の星の人々を憎んでいる。今は俺たちの味方だ」

コ「でも・・…・…」

シ「本当に味方だと言えるのかしら?!」

ベ「今、敵の闘い振りを一番良く知っているのはカララだ」

コ「確かに、戦闘アドバイザーとして、カララは利用出来る。でもしょせんは異星人。俺たちとは違う!」

ベ「心が狭いぞ、コスモ」  コ「なに?!」

ベ「宇宙は広い、地球の人間だけにこだわるな。万物は皆、平等だってことさ。

コスモの肩を叩いて、歩き出す

コ「(ニヤリとして)ベス、相変わらず話をすり変えるのが得意だね」

ベ「・…・・(ニンマリとして)  立ち去る

シ「私たちが考えなければいけないのは、広い宇宙のことなんかじゃない。ここに乗る人々の幸せだわ」

ロ「・・…・…」整然と並んだ小麦の近くにあった雑草を引きぬく

 

同・子供部屋

カ「いくわよ、アーシュラ。そら!」

椅子の上に立ったカララがクッキーを放り投げる

一列に並んだアーシュラ、デク、ファード。

アーシュラが落ちてきたクッキーをパクリと食べる

カ「上手上手!」  ニッコリするアーシュラ

「パプパプ」 ベッドの上でルウがはしゃぐ

カ「デク!そら!」  クッキーを投げる  クッキーの下へと駈けるデク

扉を開けて入って来るリン。  パクリとクッキーを口で捕らえるデク。

拍手する子供たち。   リ「まあ!(と怒った顔)」

デクたち、リンを見る  リ「あなたね、こんなことを教えたのは」

カ「そうです」  と、ニッコリする。

リ「すぐやめて下さい」  カ「あら、どうして?」

リ「お行儀が悪いからよ」  

カ「いいじゃないの。せっかく子供達が楽しんでいるんですもの!」

リ「よくないわ、(子供たちに)すぐやめなさい。ねッ」

顔を見合わせる子供たち

カ「(リンに)ほら、みんなも遊びたがっているじゃないの」

リ「・…・・」  カ「(子供たちに)そうでしょう?」

うなづく子供たち   リ「……」

踵を返し、だっと出て行く。

 

同・雑木林

駈け込んで来るリン  木陰で伏して嗚咽する。

農園の方から来たロッタがリンを見る

ロ「リン、どうしたの?」  リ「ロッタ!」

と抱きついて泣きじゃくる。  ロ「・・……?!」

 

 

同・子供部屋

激しく揺れる室内

床が傾き、右から左へ移動するベッド

激しく泣き出すパイパールウ  転がるカララとデクたち子供

ア「怖い−!」  フ「地震だ!」

デ「バカ、宇宙(そら)を飛んでて地震なんかあるか」

フ「だって……うわーッ!」  左から右へと転がる一同

カ「ニンバス・ゾーンに入ったんだわ。なんでこんな危ないことを!」

と、ドアの方へと這い進む。  尚も激しく揺れる室内

必死に飛び出すカララ  やって来たリンとはち合わせする

リ「あなた!」  と、カララ腕を掴む  カ「離して!」

リ「子供たちを置いてどこへ行くの?」

カ「ベスに話したいことがあるんです。離してっ!」

と、リンを振り切って、揺れる廊下を進んで行く。

 

ソロシップ・メイン・ブリッジ

コ「しつこい奴らだ。イデオンで追っ払ってやるぜ!」

その時、モニターを見て、あッとなるシェリル

ソル・バニアーがソロシップから外れて、木の葉の如く翻弄されながら、飛んで行くのが映ったのだ。

あッと見るコスモ。ダッと、飛び出していく。

 

同・ハッチ

宇宙服に身を固めたコスモが、ワイヤーロープをハッチにくくりつけている

走り来るカーシャ  カ「コスモ、何をする気?」

コ「ソル・バニアーを回収してくるんだ」 カ「無茶だわ」

コスモ、ハッチを開けて飛び出していく  カ「コスモ!」

 

隕(シナリオでは損)石流内

飛び出すコスモ

激しい隕(損)石流を避けそこなう

コ「うわッー!」 宙でもがくコスモ

 

CM

 

ソル・アンバーコクピット

唇を噛みしめながら、入りこむコスモ

ゼイゼイと息を吐きながら、操縦桿を握りしめ、体に巻きつけたロープをはずそうとする

その時、後方を見て、アッとなる

ソロシップのハッチから、ロープを伝いながら、カーシャが来たのだ

コ「女のくせに、無茶なことを!」

 

ソロシップ・機上

宇宙服姿のカーシャがロープを伝って11歩進む

激しい突風に足をすくわれるカーシャ  カ「うわーッ!」

一瞬、体が舞い上がるが、がっちりとロープを掴んでいるカーシャ

 

同・メイン・ブリッジ

モニターに映るカーシャ

あッと見るベスたち。

ベント「俺が、俺がソルバニアーの固定をもっとガッチリしておけば、こんなことにはならなかった……」

シ「男のくせに悔言を言うなんて、女々しいわよ」

ベント「なに?!」

ベ「二人ともやめろ!敵の重機動メカの攻撃に注意する方が先だ」

 

ソル・コンバー・コクピット

入りこんで来るカーシャ  モニターにコスモが映る

コ「カーシャ、お転婆振りもいい加減にしろ!」

カ「何言ってるの、あなた一人でソル・バニアーを持ってこられるって言うの!!」

コ「なんだと?!」  無視して、操縦桿を作動するカーシャ

 

ソル・アンバーコクピット

コ「(ニッコリして)可愛げのない女だぜ!」

操縦桿を引くコスモ

 

重機動メカコクピット

グ「わっはっはっ……これで俺も栄光あるハングの位にのし上がれるぞ!」

その時、激しく揺れる機内  ソロシップが援護射撃して来たのだ

グ「こしゃくな、粉々にしてくれるわ」

一瞬、機内が傾むく  グ「うわーッ!」

 

ソル・アンバー・コクピット

フロントに映るソル・バニアー

コ「カーシャ、イデオンに、合体だ!」

モニターにカーシャ

カ「コスモ、とちらないでよ!」

コ「お前こそな!」

隕石流内  激しく回転するソル・バニアー

コスモの声「合体だ!」

ソル・アンバーとソル・コンバーがソル・バニアーにドッキングする

だが、ソル・アンバーとソル・コンバーが逆に接合してしまう

一瞬、無様な姿になる

 

ソル・コンバーコクピット

カ「コスモのドジ!」

コ「(モニター)お互い様だ!」

 

隕石流内

メカ、分散する

コスモの声「合体、イデオン!」

ソルバニアーにソル・アンバー、続いてソル・コンバーがドッキングする

見事イデオンとなる

 

ソロシップ・、メインブリッジ

「やったぁ!」瞳を輝かすベスたち一同

 

イデオン・コクピット

カ「コスモ、どこを狙っているの。敵の弱点はメカとメカが結合したつなぎ目よ!」

コ「わかってらァ、お前の指図は受けねえ!」

と、ミサイル発射菅を作動する

 

宇宙空間

飛ぶミサイル。  ズロオジックに命中

爆発と共に、ズロオ・ジックが分離して火を吹く

続いて、ミサイルが命中。  分離し、火を吹く重機動メカ、ズロオ・ジック、突進するイデオン

ズロオ・ジックの残った胴部を叩き砕く  爆発、四散するズロオ・ジック

 

重機動メカ・コクピット

真赤に燃えるコクピット内

グ「俺の夢、ハングの位が………」

閃光、爆発するコクピット内

 

イデオン・中

疲れ切ったとばかり、操縦席で、ガックリ肩を落として伏すカーシャ

カセットのスイッチを押すコスモ。  聞こえて来る甘美なメロディ

 

ソロシップ・廊下

「コスモたちをみんなで迎えるんだ!」

歓声がして、走り来るベスたち

と、前方から、傷ついたカララがヨロヨロと歩いて来る

あッと見るベス

ベ「カララ?!」  ベン「どうしたんだ、カララ?!」

カ「………」  肩の傷を見つめるベス。

ベ「………」  見つめる軍人たち。

ベン「誰だ?!お前を撃ったのは誰だ?!」  と、カララに触れる

カ「触らないで!」 一瞬たじろぐベント

シ「カララ、言いなさい。あなたを撃ったのは誰なの?!」  カ「………」

「カララ、なぜ黙っている」 「教えろ、カララ!」 「カララ!」

と、口々に叫ぶ軍人たち

 

同・農園

目をギラギラさせ、両手で耳を塞いでいるロッタ。

その全身がブルブル震えている。

ロッタの幻聴で---「カララ、カララ」と響く声。

普段の穏やかなロッタの顔がみるみる憎悪の顔へと変貌していく

銃を握り締めるロッタ

うわーッと叫びながら、立ち上がる。

 

同・廊下

叫び声に前方を見るベスたち

鬼の如き形相で林から廊下へと現れるロッタ。

「ロッタ!」 一斉に叫ぶベスたち   憎しみを込めて銃を構えるロッタ

ロッタの後方、廊下の向うから、今しも戻ってきたコスモ、カーシャ

そして、扉を開けて子供部屋から出てくるデク、アーシュラ、ファード

さらにリンが一斉に立ち止まる

リ「(声にならぬ声で)ロッタ………」と見つめる   キッと、カララを見据えるロッタ

ロ「私は憎む、あなたを憎む」  カ「………」

見つめるベスたち一団  見つめるコスモたち一団

ロ「平和だったソロ星を混乱に陥し入れ……父や母を殺し……多くの人々を殺した……そえはあなた!」

カ「………」  ロ「その罪を全て忘れて、自由気侭に行きているあなたを憎む。自分たちの罪を罪とも思わない、あなたを憎む」

カ「私は……」

ロ「お黙り!あなたが来てから、このソロシップの中も乱れ始めて来た……許せない、許せない!」

銃を構えて1歩踏み出すロッタ

後退去るベント、ジョリバ、軍人たち

シ「ベス!」シェリルを抑えるベス。   シ「なぜ?!(止めないの?)」

応えずに見つめるベス。  立ち上がるカララ

カ「私はあなたたちにとって、憎むべき人種であるかもしれません。憎まれている!それを誰より知っているのは、私自身です」

ロ「御為ごかしは言わないで!」

カ「そう思われても仕方無いわ。ただ、これだけはおぼえておいてちょうだい!」

威丈高に胸を張るカララ  カ「私は罪をつぐなおうと、私なりにやってみたと言うことを!」

憎悪を燃やすロッタ  ロ「その態度、その言い方が許せない!」   カ「撃つなら……撃ちなさい」

シ「ベ、ベス……」  ベ「二人がトコトン納得するまでやらせればいい。上っ面でわかり合おうなんて思う奴は、心の落ちこぼれだ」

カ「さあ、撃つなら撃ちなさい!」

 

<中略>

 

カチカチカチ!  ロッタの銃の弾が切れる。

放心状態のロッタ。  その傍をすり抜けて歩いて行くカララ。

見つめるベス、シェリル、ベントたち   歩くカララ。  

前方のリンが腰砕けで気絶する  支えるコスモ。  歩くカララ。   

子供達が道を開ける。

「うわーン!」 突如、号泣して床に崩れるロッタ。

尚も激しく泣くロッタ。ガクンと膝を折るカララ。

激しく泣くロッタの声が一層高まって-----

<つづく>

 

 

第14話「撃破・ドク戦法」

ドロワ・ザン・ブリッジ

モニターに映るソロシップ   見つめるハルル

その傍にバッフ軍人、ジルバル・ドク

ド「異星人は予想通り、スター・ダストの近くに向かっています」

うなづくハルル

ド「この辺りは自分が最も知り尽くした庭同然の所です。ハルル様!」

ドクを見るハルル

ド「自分に攻撃させて下さい」  うなづくハルル

ド「ありがとうございます。このジルバル・ドク、必ずご期待に応えてみせます!」

 

ソル・アンバーコクピット

操縦桿をグイッと握りしめるコスモ

コ「俺が一番乗りだ。俺の手でみんなを救ってやるぜ!」

操縦桿をひくコスモ

 

重機動メカコクピット

ソル・アンバーを見るドク

ド「巨人になるメカの一部だ。まずはあれを消せ!」

 

宇宙空間

発進するソル・バニアー、ソル・コンバー。

次第に小さな惑星群の浮遊する宇宙空間(スターダスト)へと逃げこむズロオ

激しくビーム砲を撃って追うソル・コンバー

と、周囲に浮遊した小惑星群の影から次々と姿を現すズロオ

一瞬のうちにソル・アンバーを取り囲む

 

ソル・アンバーコクピット

ギョッとなるコスモ  あわてて、前後左右を見る

次々と小惑星群の陰からズロオが出現  一斉射撃する

意を決し、操縦桿をひくコスモ

 

宇宙空間(スターダスト)

一斉射撃を浴びながら、前方のズロオを破壊し、突破する。

だが小惑星群の陰からズロオが出現

ズロオの一斉射撃に、右翼を破損するソル・コンバー 一小惑星へと落ちていく

 

スターダスト・小惑星A

岩ばかりの小惑星に不時着するソル・アンバー

洞窟へと、滑降していく。  追って来たズロオ編隊が攻撃

岩が砕けて飛ぶ

 

小惑星A・洞窟の中

片翼が破損し、滑走のみで飛べないソル・アンバー

洞窟の岩が激しく崩れ落ちる  その上から尚も激しく攻撃される

 

ソル・アンバー・コクピット

眼前に焼夷弾雨が見える。  轟音、そして岩の炸裂音

一瞬耳を覆うコスモ

コ「このままではダメだ、早くイデオンにならなくては……」

激しい閃光。  ウワッと、目をふさぐコスモ

コ「早く、早く来てくれ!」

ミサイルの弾の衝撃でコクピット内が揺れる。

バラバラと砕け落ちる洞窟内の岩

みるみる蒼白な顔になるコスモ

コ「早く。誰か……早く……」

恐怖で顔をひきつらせるコスモ。  尚も執拗な攻撃が続く。

ブルブルと震え出すコスモ

コ「誰か……助けて……助けてくれェ!」  絶叫

 

小惑星A・上空

尚も激しくミサイル弾を撃つズロオ

最後に残った岩山が砕ける。  攻撃がやみ、硝煙が晴れると、平地に岩が転がり、所々、陥没した大地が無残に現れる

 

重機動メカ・司令室

ド「わっはっは……宇宙の藻屑となったか!もはや巨人にはなれん。あの宇宙船をただちに襲うのだ!」

 

宇宙空間

ソロシップに突進するズロオ編隊

その途端、ソロシップがハレーションを起こす

一瞬翻弄されるズロオ編隊

 

小惑星大地

ハレーションの中を急降下するソル・バニアー

土砂に機体を埋めたソル・アンバーに突進するソル・バニアー

土砂の中に機体を突っ込みソル・アンバーとドッキングするソル・バニアー

急速接近したソロシップに呑み込まれる

 

ソロシップ医務室

「コスモ」  「コスモのあんちゃん」  「お兄ちゃん!」

気絶しているコスモに声をかけるカーシャ、デク、ファード、アーシュラ

カ「コスモ、しっかりして!」  ふっと目を開けるコスモ

恐怖の目を見開く

 

同・廊下

夢遊病者の如く歩くコスモ

 

ブラジラー星

着陸するソロシップ。  中から降り立つベス

前方に女司令官、カミューラ・ランバン(38才)が立っている

<中略>

カ「あそこにいる若者は?」

振り向くベスたち。  呆然と立っているコスモに気付く。

ベ「クルーの一人、ユウキ・コスモ。パイロットです」

カ「こんな子が……」  と、コスモを見る。

カ「何てキツイ目をしているの?」

じっとコスモを見据える。  一瞬カミューラを見るコスモ。

次の瞬間通りすぎていく

カ「(ポツリと)似ている……」

気にかかって、立ち去ったコスモの方を見続けるカミューラ。

 

<中CM>

 

ソロシップ・メインブリッジ

カ「どうかしたの?!ベス?」

ベ「うかがいたいことがあります」

カ「なあに?」

ベ「この基地の戦闘体制ですが不充分の様に思われます。体制は整っているのでしょうか?」

眉をしかめてベスを見るカミューラ  と、前方の扉の隅にコスモがいる

一瞬コスモを見るカミューラ

ベ「どうなのですか?」

カ「ここは最前線基地です。戦闘体制はいつでも出来ています。あなたは、この星に来る途中で、戦闘機に気付かなかったの?」

ベ「(叫ぶ)あんな戦闘機だけじゃ!」

カ「それだけじゃないわ。その他、東西の上空に各40機、この本部に30機、それにミサイル・ランチャーを装備したジープが50台あります」

愕然となるベス

シ「(呆然となり)ベス……」

ベ「戦闘機がたったそれだけでは、あっという間に壊滅されてしまいます」

ニッコリとするカミューラ

カ「ベス、私たちは軍人です。戦闘のプロです。心配することはありません」

<中略>

コ「駄目なんだ。そんなもんじゃ駄目なんだ!(脅えた如く叫ぶ)」

コスモの方に進むカミューラ

カ「コスモ君と言ったわね。おびえることはないわ」

コ「……」

と後退りする。  その腕をさっと掴むカミューラ

カ「心を落ちつけて……私に何でも話してごらんなさい。どんなに恐かったかを話せば、心も晴れるわ」、心も晴れるわ」

と、やさしく見つめる。

コ「………」 カ「さあ、コスモ、話してごらん……」

コ「おばさん、やさしいんだね」  カ「(はっとなり)………?!」

コ「本当にやさしい目をしているね」

カ「可哀想に……」  と、コスモをやさしく抱きしめる

コ「………」  嗚咽する。  コスモの手を取り、うながすカミューラ

カ「さあ、いらっしゃい!」  成されるがままになるコスモ。

見つめる一同

 

同・外

本部へと入っていくカミューラとコスモ

見つめるベスたち

シ「何でもいい。今のコスモはすがる物が欲しいのね……」

 

ブラジラー星・林の中の池

池の岬に一人、座りこんでいるコスモ

小鳥のさえずり。  傍の小石を池に投げこむコスモ

広がる波紋。  それがおさまると、水面に女の姿が映る。

えっとなるコスモ。

振り返ると、美しく優しい面差しの女が立っている。

それは軍服を脱いだカミューラだ

カ「一人になりたい時、私もここに来ます」

離れた所に坐るカミューラ。  池の魚が水面ではねる

カ「(独りごとで)私にもあなたと同じ年頃の息子がいます」

コ「………」 カ「私をとっても慕ってくれた。そう、私は思っていました」

カミューラを見るコスモ

カ「でも、あの子は父親を選んだ。私たち夫婦が別れた時、あの子は父親に、ついて行ってしまった………」

コ「………」

カ「それが、さっき、わかったような気がする……」

コ「………」二人は黙って、池を見つめる。  再び、水面に魚がはねる。

 

宇宙空間・重機動メカ・司令室

レーダーに光点が明滅する

兵士「異星人の戦闘機を発見!」

ド「なに?!」

兵「いかが致しましょう?」

ド「奴らが隠れているかも知れん。捜すんだ。邪魔したら、叩き潰せ!」

兵「は、はい!」  イライラと前方を見つめるドク

 

ブラジラー星・本部・中

ドアを開け、軍人が飛び込んでくる

軍「隊長、敵機が!」  カ「あわてることはない」

軍「し、しかし、大変です」

ゼイゼイと息をし、唾を飲む軍人

見つめるベス、シェリル

カ「どうしたのです?」  軍「東に配した戦闘機が全滅しました」

カ「なに?!なんだと?!」  ダッと駆け出すベスたち

入れちがいに駈けて来る軍人

軍「報告します。救援に向かった偵察機が………一機を残して全滅しました」

驚くカミューラ

カ「馬鹿な、そんな馬鹿な。 何かの間違いではないのか?」

と、うろたえる。  その姿を呆然と見ているコスモ

 

ブラジラー星上空

次々と飛び立つブラジラー星の戦闘機

襲来するズロオ編隊。  全くスピードの違う戦闘機

ズロオ編隊に瞬く間に撃墜される

 

同本部・指揮官室・中

急降下してくるズロオ編隊

呆けた如く、窓から見るコスモ

ソル・バニアー、ソル・コンバーが飛び立つ

カ「(髪を束ね)ここから出るんじゃありませんよ!」

 

同・本部前

逃げ惑うブラジラー星の軍人たち

始動したジープが次々と撃破される。  軍人達を指揮するカミューラ

その近くに爆弾が炸裂する。  爆風にあおられるカミューラ

その束ねた髪がバサッと広がる。  本部前に出て来て周囲を見るコスモ

平服のカミューラが軍人を指揮する。  カミューラの近くで、ジープが爆発

避けるカミューラの傍から、爆撃を受けたジープが横倒しとなる

飛びのくカミューラだが、ジープに足を潰される

片足がジープの下敷となリ、身動き出来ぬカミューラ。 見るコスモ。

必死に抜けだそうとするカミューラ。  近くを逃げまどう軍人たち

カ「誰か……誰か!」  カミューラに構わず逃げまどう軍人

コ「………!」ダッと駈け出す

激しい攻撃の雨の中を走るコスモ。

ズロオ編隊が上空で加粒子砲を撃つ。  攻撃を避けながら駈けるコスモ

カミューラの上のジープの残骸を必死で起こすコスモ。

うめくカミューラ。  抱き起こすコスモ。

カ「コスモ、あなた……」

キッと、カミューラを見据えるコスモ。

カミューラに肩を貸す。  カミューラを抱えて進むコスモ

上方からズロオが攻撃する。  アッと見上げるカミューラ。

コスモを押し倒し、覆うように身を投げ出す。

その途端、激しい加粒子砲の雨。  吃驚するコスモ。

コ「おばさん!」  グッタリと倒れるカミューラ

身を起こすコスモ。  その瞳が炎の如く燃えている

キッと、上空を見上げるコスモ。  ダッとソロシップに突進する

 

ソル・アンバーコクピット

駈け込んで来るコスモ

操縦席に坐り、キッと前方を見据えるコスモ

グイッと、操縦桿を握る

モニターに映るベス。

ベ「コスモ、ソル・アンバーは右機関部が故障している。飛べないぞ!」

右機関部のエンジンメータをパワーアップするコスモ

グイッと操縦桿を引く

 

右旋回しつつ飛び立つソル・アンバー

激しく攻撃するズロオ

右旋回だけで避けるソル・アンバー

 

ソル・バニアーコクピット

急降下してくるソルバニアー、ソルコンバー

追撃するズロオ編隊

ソルバニアー、ソルコンバーがソルアンバーと合体しようとするが、ソルアンバーが外れる

ソルバニアー、ソルコンバー、あわてて分散

加粒子砲で襲いかかるズロオ。  避けながら編隊飛行する三体のメカ

再び接近し、見事、合体。  イデオンとなる

襲いかかるズロオ編隊。  狂った如く暴れるイデオン

全く、攻撃の下しようもないズロオ。

 

重機動メカ・司令室

愕然と見るドク

ド「巨人が甦った!引け、ひとまず引け!」

 

イデオンを取り囲んでいたズロオが一斉に逃げる。

ズロオのいない空間で、遮二無二、暴れまわるイデオン

 

ソルバニアーコクピット

カ「コスモ、もういいのよ。敵はいないのよ!」

 

イデオンコクピット

全身汗でずぶ濡れのコスモ

ゼイゼイと肩で息するコスモ

その顔には大粒の玉の汗が流れる(それは涙と混じっているかも知れない)

 

大地

倒れたカーミュラの近くに一、二歩進むイデオン

グアーンという、摩訶不思議な咆哮音を響かせる

それは悲しみの慟哭のように聞こえ、いつまでも鳴り止まぬ。

<つづく>

 

 

第15話「イデオン奪回作戦」

ソロシップ・甲板上

砲塔の設置作業を見つめるベスとシェリル

後方から駈けて来るベント

ベン「ベス!」  振り向くベスとシェリル

ベン「マシンの取りつけは全て完了した」

ベ「うむ!」

シ「あとは、これだけね」

ベ「準備出来次第、すぐに出発だ!」

と、砲塔の設置作業を見つめる

 

ソロシップ、後方に設置されているブラジラー星の戦闘機、小型巡洋艦

巡洋艦の周囲を駈けまわる子供たち

各マシンの接続部を確認して歩くカララ。  ひょっこり、カララの前に現れるテクノ、モエラ

カ「(驚いて)あッ!」

テ「何をしている?」

カ「マシンが外れないかどうか、確認を……」

顔を見合すテクノとモエラテ「何か細工してたんじゃないだろうな?」

カ「いいえ」

モ「本当だろうな?」と詰め寄る  「本当だ!」と声。

振り向くモエラ、テクノ。  コスモが立っている

コ「俺が後からみんな点検した。カララは、マシンがはずれないよう確認していただけだ!」

テ「………」  モ「それならいい。テクノ、行こう!」

テ「カララ、本当に信じたわけじゃないからな!」  と立ち去る

カ「(見送って、コスモに)あなたも疑って私の後をつけていたの?」

コ「俺は信じてる」  カ「え?!」

コ「俺はあんたをソロシップのクルーの一員だと認めている」  カ「ホント?!」

うなづくコスモ

カ「ありがとう、うれしく思います」

一瞬微笑を返して、子供たちのほうを見て叫ぶコスモ

コ「ソロシップが出発するぞ。みんな中に入れ!」

うわーッと、駈けるデクたち。

コ「(カララに)あとで話したいことがあるんだ。農園に来て欲しい」

カ「はい」 と、うなづく

 

ドロワ・ザン・司令室

モニターに映るブラジラー星

遠距離のため、映像がぼやけている

ブラジラー星から飛び立つソロシップ

見つめるハルル、傍に、ドク

ド「ハルルさま、お願い致します。今一度、私に攻撃命令を」

ハ「お前の見事な戦い振り、一度見ればたくさんだ」

ド「ハルルさま、そのような……」

ハ「もうよい。お前は本国に戻り、防衛軍人として働くがいい」

突如、跪くドク

ド「ハルルさま、私を。ジルバル・ドクをサムライにしてください。異星人との闘いに敗れ、本国で生き恥をさらす訳にはまいりません」

冷たく見つめるハルル

ハ「生きて恥をさらすより、死んだ方が良いと言うのか?」

ド「それが武人の勤めと心得ます」

ハ「策はあるのか?」

ド「は?!」

ハ「異星人を倒す作戦はあるのかと聞いているのだ」

ド「は、はい!」

ハ「死を決意したこと、忘れるな」

ド「ありがとうございます」

 

 

重機動メカ・司令室

腕を組み、イライラと歩き回るドク

見守る兵士たち

ド「ええい。これだけ集まって、誰も良い策を考え出せんのか?!」

うつむく兵士たち

ド「グズグズしていたら、異星人は逃げてしまうのだぞ!」

尚もうつむく兵士たち

ド「何でもよい。異星人を倒す方法を考え出せ!」

 

 

ソロシップメインブリッジ

ハ「それがダボラ星から通信が入ったのですが……」

シ「ダボラ星といえば、地球の新しい移民星じゃないの、何ですって?」

ハ「はい。私たち乗組員のうち、十人程度なら、受け入れる体制があると」

シ「バカを言いなさい。十人ばかし受け入れてもらっても仕方無いじゃないの」

ハ「全員で避難したいと何度も交渉したのですが、ダメでした」

シ「私があとでもう一度念を押してみます」

ハ「はい。これが通信周波数と、ダボラ星の座標点です」

と、コンピュータカードを渡す

シ「(受け取り)ベスはどこにいるのかしら………」

と、カードを無造作にポケットにしまう

 

<中略>

 

ベ「俺達百人たらずの命のために、数十億の地球の人々を戦果の渦に巻き込むわけにはいかない」 

と、その場を立ち去る

ベン「地球を混乱に陥れるのは、俺も反対だ」 と、後に続く

「地球に行くべきじゃない」  「下手に恨まれるより、万一の時はこのまま死んだ方がいい」

シ「みんな、聞いて、グローリアは素晴らしいコンピュータなのよ」

だが、次々と去る軍人たち。  呆然と立つシェリル  シェリルを見つめるカーシャとコスモ

カ「ベスの意見が通ったようね」

シェリルの傍に残ったのは数人の軍人だけだ

シ「私の意見に賛成なのは、たったこれだけ……」

独りごちて、怒り震える

 

 

同・シェリルの部屋

自分の上着を床に叩きつけるシェリル

シ「ベス、ベス、ベス……立派だわ。あなたは立派な指揮官だわ!」

上着から、コンピュータ・カードがこぼれている

気付き手にするシェリル。  カードを見つめるシェリル

キッと、顔を上げるシェリル

 

同・カララの部屋

掃除機で部屋を掃除するカララ。  突如扉が開く

振り向くと、シェリルが立っている。

掃除機を止めて、ニッコリするカララ。  扉を後手に閉め、銃を構えるシェリル

あッと、驚いて見るカララ。

 

ソロシップ格納庫

数人の軍人達が小型巡洋艦に入って行く。  服の中に銃を入れ、カララをうながし、やって来るシェリル

保管された巡洋艦に入れとばかり、アゴをいなすシェリル。  中に入るカララ

 

同・廊下

カララの部屋の前で、ノックしているコスモ。  来るカーシャ

カ「コスモ、近頃、趣味が変わったようね」

コ「そうして人間は成長するんだよ」

カ「ねえ、どうしてカララにまとわりつくの?ホントのことを教えて」

コ「きっと恋をしたんだろう!」

カ「まあ、ずいぶんね、カララ」 とドアを開ける

誰もいない。  掃除機だけが放り出してある

カ「だらしのない人ね」  ?と見つめるコスモ。

声「何をしているんだ」  振り向くとベスが立っている

コ「カララを見なかった?」  ベ「いいや」

コ「待ち合わせをしていたのに、おかしいな」

ふっと顔を見合すベスとコスモ

 

同・メインブリッジ

声「シェリル、カララ、至急、メインブリッジに来て下さい。 シェリル、カララ、至急、メインブリッジに来て下さい。」

機内放送が響いている  駈け込んで来るコスモ

振り向くベスたち。  コ「巡洋艦が1機無くなっている」

ベ「なに?!」  モ「逃げたんだ!」

テ「カララめ、シェリルを人質にしたな!」

ジ「シェリルの命があぶない!」  ベ「(独りごちて)カララが……バカな」

テ「やっぱり、あの時、マシンを!……コスモ、お前の責任だぞ」

ダッと走り出すコスモ。  続くベス

ジ「シェリルを助けるんだ!」  一斉に走り出す一同

カ「騒ぐことないわ。カララもシェリルも、そんなに必要な人かしら………」

と平然とする

 

<中CM

 

イデオ・デルタコクピット

コスモの前のモニターにベスが映る

ベ「まだか、まだ巡洋艦は見つからないのか!」

モニターカーシャに変って

カ「焦らないで。いつものベスらしくないわよ」

ベ「巡洋艦は無力だ。異星人に見つかったらどうするんだ」

カ「その時はその時よ。焦って仕方無いわ」

ベ「なに?!」

コ「カララを信用しようとした俺たちは間違いだったようだな。ベス」

ベ「シェリルの身を安じているんだ。カララのことなどどうでもいい!」

モニター切れる。  コスモ、前方を見据えている

 

ソロシップ・ブリッジ

一人立つベス

ベ「カララ、まさかお前、本当に………」

次第に、怒りが込み上げて、鉄柵に拳を叩きつける。

 

巡洋艦ブリッジ

<中略>

カ「見事に騙されたわね」

シ「仲間に見捨てられたご気分はどう?!」

カ「始めから覚悟していました。あなたこそ、私にわずかな望みを抱いていたんでしょう。哀れですね」

キッとなり、銃尻でカララの肩を叩くシェリル。うッと、倒れるカララ

バーンと、壁を叩くシェリル

 

 

ソロシップブリッジ

モニターにベントが映る

ベン「ベス!」

振り向くベスとコスモ

ベン「降伏したように見せかけるんだ」

ベ「なに?!」  ベン「俺が囮になる」

コ「何か策があるのか?」

ベン「まかせておけ!ただし、敵を混乱させるチャンスはほんの一瞬だ。その機を逃さないでくれよ」 キッとうなづくベス

 

宇宙空間

進むイデオバスタ

ズロー数機が偵察機を取り囲みながらイデオ・バスタに接近する

重機動メカのビーム砲が偵察機に向けられる

イデオ・バスタを取り囲むズロー数機  イデオ・バスタの傍に寄る

 

イデオ・バスタ・コクピット

両手を上げているベント、カーシャ

フロントに、接近して来るズローが見える

カ「ベント、一体どうするつもり?!」

フロントに、横付けにしたズローが見える

ニタリと笑うベント。  操縦席に、バッテリーが置かれ、配線が壁を伝って、外へとつながっている。

イデオ・バスタを取り囲み、移動するズロー

前方の巡洋艦に接近。

ベン「(見て)今だ!」

操縦席のバッテリー・スイッチを入れる。

途端に、激しいスパークが壁に走る

スパークに耐えるベント、カーシャ

 

宇宙空間

激しくスパークするイデオ・バスタ

スパークを浴びて、一瞬ひるむズロー数機

次の瞬間、イデオデルタ、イデオ・ノバが重機動メカに突進する。

ビーム砲を撃つが体勢を崩して、重機動メカに命中しない。

逃げる重機動メカ。

 

イデオ・デルタ・コクピット

コ「イデオンに合体だ!」

 

宇宙空間

各メカ、合体し、イデオン完成  突進する重機動メカ

身構えるイデオン。  ビーム砲を発射する重機動メカ

一瞬のけぞるイデオン。  突進する重機動メカ

空転するイデオン、重機動メカの後方に回り込む。

あっと、振り返る重機動メカ。  突進するイデオン

重機動メカに体当たり。  のけぞる重機動メカ

ビーム砲を発射するイデオン。  ビーム砲浴びる重機動メカ

 

重機動メカ・司令室

閃光の中で、驚愕するドクの顔が一瞬浮かんだ

その次の瞬間、爆発する。

 

巡洋艦・コクピット

風圧で揺れるコクピット内  アッとよろけるシェリル

肘を突いて、シェリルの銃を奪うカララ

カ「楽しい独り芝居を見せていただいたわ」

と、シェリルに銃を向ける

カ「お礼に、今度は私がお芝居を見せてあげる!」

 

宇宙空間

イデオンが巡洋艦を抱え込む

 

巡洋艦コクピット

ドアを開け銃を構えて入ってくるベス

銃を向けるカララ。  身構えるベス

ベ「カララ、貴様!」

その途端、次々と入って来るコスモ、カーシャ、テクノたち。

銃を捨てるカララ。

カ「やはい、逃げることは出来なかったようね……」

目を見張るシェリル

テ「こいつ、殺してやる!」  と、カララに銃を向ける

だが、それより早くカララに突進するコスモ

バシッと、カララを殴る  倒れるカララ

一瞬、顔をそむけるシェリル。  カララが立ちあがる

バシッと、今度はベスが殴る。  再び倒れるカララ

シ「カララ!」 カ「あなたはいい仲間を持って幸せね」

シ「カララ………」とうなだれる

ベ「カララ、しばらく独房に入ってもらおう」

うなづき、立ちあがるカララ

カー「(カララの耳元で)あなたにいろいろ聞きたいことがあるわ」

カ「………」

カーシャ、シェリルをチラッと見て、カララを連れて行く。

ワナワナと小刻みに震えるシェリル

その時、服を焦がしたベントが駈け込んで来る。

ベン「シェリル!」  顔を上げるシェリル

ベン「(見て)無事だったか……」  微笑して、ガクッと両膝を突く

操縦菅に伏して、激しく震え出すシェリル

 

 

ソロシップ備品室

暗い中にシェリルが居る  入ってゆくコスモ

コ「シェリル、どうして?!」

シ「脱走したのは……カララじゃないのよ」

エッとなるコスモ。  意味が飲みこめず、いぶかしげに見る

シ「私がやったことなの……」  コスも、目を見張り

コ「どういうことなんだ?!」

シ「私は地球へ行きたかった……」  コ「……」

シ「カララを人質にして、あなた達の追跡をのがれたかったの」

顔を見合す、コスモ、シェリル

コ「たった一人で、問題の全てを抱え込もうとするからいけないんだ!」

立ち去るコスモ ガックリとうなだれるシェリル

 

ソロシップ、独房前

立つカーシャとカララ

カー「(錠を開けながら)私はわかっているわ。あなたが脱走したんじゃないんでしょう」

カ「………」

カー「でも、ここに入ってもらわなくてはならないわ」

と、扉を開けて、うながそうとする

入ろうとしたカララが、ふっと、廊下の先を見る

ベスが立っている

 

ソロシップ・シェリルの部屋

鏡の前に坐るシェリル  目からボロボロと涙を流している

シ「あの女に、カララに、借りを作ってしまった……」

<つづく>

 

 

 

第16話「必殺のダミド戦法」

 

ドロワ・ザン・ブリッジ

ハ「お前の休養中、ジルバル・ドクが戦死した……ギジェがロゴ・ダウ捜索から戻らぬ今、頼みは、ダミド、お前だけだ」

ダ「あり難きお言葉、見に余ります」

ハ「忠義の志の厚いか、薄いかは、戦闘の多少に表れると、バッフ・クランの金言にある」

ダ「(緊張)!」

ハ「倒せ!」

ダ「……」

ハ「必ず倒せ……父ドバからの増援をいつまでも待っておれぬ…こうしている間にも、敵は、着々と体勢を整えているやもしれぬと思うと……待てぬ」

ダ「おおせの通りです……今は、光明の見える戦闘に身をまかせるのが、打開の道」

ハ「……ダミド、吉報を待つぞ、今度こそ……」

ダ「(重圧を笑いでごまかす)久々の出撃に、血がわきたつ思いです」

ハ「(頷く)……準備が整いしだい、すぐに出撃しろ」

ダミド、敬礼

 

同・戦闘機発着デッキ

ダ「お前達は、幸運だぞ」

顔を見合わせる兵士達

ダ「異星人壊滅作戦に参加出来る事は、お前達の後々の子孫まで語り継げる栄誉となるだろう」

ゴクッと唾を飲みこむ兵士。

ダ「お前達の命は、このダミドが預かったぞ……いいか、後退は許さん、常に目標に向かって、突き進め」

兵士達「―――――――」

ダ「あらゆる武器を有効に使え!最後の一発まで撃ち尽くせ!」

兵「―――――――」

ダ「白兵戦も覚悟しろ!それが恐ろしければ、体当たりしろ」

ざわめく

ダ「騒ぐな!生きて戻ろうと思うなよ……お前達の勇敢な戦いがバッフ・クランの永遠の繁栄を築くのだ」

ビ「バッフ・クラン、バンザイ!」

直立不動でいきなり叫ぶ

兵「バッフ・クラン、バンザイ!」

唱和する

満足そうなダミド

 

 

ソロシップ・檻

カララが沈み込んで、じっと坐っている

前で憤然としているコスモ、カーシャ

カー「カララは、悪くないのよ……それをいつまでも檻に入れとくなんて、どう言う事よ!」

カ「いいの……私が悪者になっていれば、皆、平穏になるもの」

コ「ずい分、甘ちゃんなんだな、カララ」

カ「(薄く笑う)――――

カー「何も皆の中に溶け込みたいからって、あんたが犠牲になることないわ」

コ「文句いってやるぜ、奴らに」

カ「止めて、悪口言い合うのは」

コ「(呆れて)これだもんな」

カー「主張は、押し通さないと……上手く利用されるだけよ」

カ「――――――」

兵士、コスモ、カーシャを呼びに来る

兵「すぐにブリッジに集まる様にと……ベスが」

うんざりして立ちあがるコスモ

コ「すぐに出られる様に言ってやるよ」

 

 

同・メインブリッジ

デクが興味深げに覗いている

ベス・シェリルを中心とした年長者達の作戦会議

コスモ、カーシャは離れて興味無さそうに座っている

ベ「第六文明の遺跡であるイデオン、ソロシップには、まだまだ分からない部分が数多くある。」

シ「判ってきた所もあるわ」

べ「(頷く)戦いの中で感じてきた事は、イデオンだけでは、まだDSドライブは不可能だ」

ベン「DSドライブする時は、素早くイデオンが帰艦しないとな」

ベ「(頷き)イデオンとソロシップ、互いに補い合ってこそ、ニのものを五にも十にも出来るのでは…と言うことだ」

ハ「チームプレイだな」

カー「システム・パワーが違うものを無理に合わそうとすれば、互いに相殺する場合もあり得るわ」

ベ「パワーを増すことも考えられるだろう」

カー「それはどうかしら?」

シ「やってみないで、何が判るのよ…偉そうに」

カー「(向き直って)なら言わせてもらいますけど……バッフクランが攻めて来る理由も、お忘れになったのかしら」

シ「(ウッと)………」

カー「イデが何であるか……このイデオン、ソロシップ、それぞれイデに関わりあるのかはっきりさせてくれれば、何も戦わなくとも良かったんじゃなくて」

シ「………」

コ「それを調べてないのは、なまけている証拠だぜ」

シ「今は、そんなこと論じているんじゃないのよ」

コ「(ニヤリとして)……」

シ「何よ……これからは、命令系統をはっきりさせるわ……全戦闘員、ベスからの指令で動くこと……よくって」

ベン「賛成だ」

コ「……」

<中略>

コ「チビ達だけが、判ってくれているのは」

ベ「コスモもカーシャもよくやってくれている……ここは一つ、シェリルの意見に従った上でさ、なおかつ、いいところを見せてやれよ」

コスモ、カーシャ、まだ不満

カー「そんなことより、カララを早く檻から出してくれないかしら」

シ「………」

カー「あなただって、気が引けるでしょ」

シ「(ムッと)―――――――――」

ベ「―――――――――」

コスモ、カーシャ、出ていく

 

同・檻

カララ、瞑想

来るベス

カ「?!」

ベ「―――――――――」

見詰め合う

ベス、黙って鍵を開けると、「出ろ」と目で合図。

カ「怒っているの?」

ベ「―――――――――」

カララ、仕方なく出る

ベ「(つぶやく)感謝する、カララ」

カ「(聞こえなかった)えッ?」

ベスの目が笑っている

立場上、あからさまに表現できないベスの表現方法だった。

カ「(判って)―――――――――」

突然ズズーンと大振動

転倒するベスとカララ

ベ「!」

再び、ズズーンと大振動

 

<中・CM>

 

イデオン・Aメカ・コクピット

フロントから見えるズロオ・ジック群

エネルギー・メーターが輝く

コ「ム?パワーが一段と増しているぞ」

デ「(節をつけて)GO・GO・イデオン」

ずっこけるコスモ

 

宇宙空間

ソロシップから、イデオンが飛翔する

その一瞬を突いて、ズロオ・ジックのビームをイデオンに集中させる

ふいを食らって、揺らぐイデオン

 

イデオン・Bメカ・コックピット

弾みで、操縦席から投げ出されるモエラ

モ「(腰をさする)痛ててて……」

コ「(モニターから)モエラ、いつまでも戯れているなよ」

モ「(ムッと)何ッ」

 

ジグマック・コックピット

一直線にイデオンが迫って来る

ビ「(あわてて)巨大メカが迫って来ます!」

ダ「あわてるな!ズロオ・ジックを盾にしろ……ズロオ・ジックをジグ・マックの前面に並べるんだ!」

ビ「(流石にためらう)し、しかし……ダミド様」

ダ「勝つために手段を選んでいられるか……(マイクに)一号、ニ号、三号、指揮艦の前方に出ろ……十五号以下は、敵の母艦の左側を徹底して攻めるんだ!」

 

ズロオ・ジック・コックピット

蒼くなる兵士

ダ「(マイクから)一号、モタモタするな……命令無視は、軍法会議にかける」

兵「畜生!」

目を閉じると、いきなりイデオン目掛けて突進していく

 

亜空間

イデオン、体当たりして来るズロオ・ジックを撃墜させる

ジグ・マックの盾になる三機のズロオ・ジック

イデオン、執拗にジグ・マックを追う

そのスキに残りのズロオ・ジックは、ソロシップの片側を集中的に攻め始めた

 

Aメカ・コックピット

次々とジグ・マックの盾になるズロオ・ジック

コ「何て指揮官なんだ……味方の攻撃機を盾にして」

デ「汚い奴!」

モ「(モニターから)指令が聞こえないのか?コスモ」

コスモ、ズロオ・ジックを撃墜しつつ

コ「細かいのを百落とすより、指揮官を落とせ……戦いの初歩じゃないか」

モ「(モニターから)ソロシップが攻撃されているんだ」

コ「僕らに命令するくらいなら、奴らの方が偉いんだ、自分達で守れるだろう」

 

同・Cメカ・コックピット

カー「そうよ、お手本を見せてくれるわよ、素晴らしいのをね」

ズロオ・ジックを撃ち墜す

 

 

同・Aメカ・コックピット

コスモと反対方向を見ていたデク、失速するソロシップを認めた

デ「あんちゃん!皆んなが落っこって行くぞ!」

コ「何ッ!」    見る

 

同・Cメカ・コックピット

カー「!コスモ、ソロシップが亜空間から消えたら……」

 

同・Bメカ・コックピット

モ「!……戻れなくなるぞ。イデオンだけじゃ、まだDSドライブは出来ないんだ」

 

ジグマック・コックピット

失速するソロシップが見えている

ダ「(狂喜)これで勝った、ギジェに勝った……(笑い出す)……これでハルル様も、俺をギジェより優れた武人と見るだろうよ…」

ソロシップに向かわんとするイデオン

ダ「全軍巨人メカを包囲しろ!母艦に戻すな」

ビ「は」

 

亜空間

包囲したズロオ・ジックに体当たり気味に立ち向かうイデオン。

怖れをなして、包囲網が乱れる

突破したイデオン、猛スピードデジグ・マックを追う

 

ジグマック・コックピット

失速していくソロシップ

ダ「あそこだ、逃がすな、ビラス」

と、ガクンと衝撃がある

転倒するダミド

ダ「ナ、何事だ」

ビ「キョ、巨人が後に!」

ダ「(驚愕)何だと」

 

亜空間

ジグ・マック旋回する

イデオンのグレン・キャノンを危うく避けた

イデオン、ジグ・マックに迫ろうとするが、ジグ・マックは、三機のズロオ・ジックを盾に、前面に出てこない

ズロオ・ジック、イデオンを攻撃

イデオン、反撃

盾にしたズロオ・ジックが撃墜されると、別のズロオ・ジックを盾にするジグ・マック

それでも、ちょこっと出ては、イデオンにビームを浴びせるのだ

じれたイデオン、ズロオ・ジックにミサイルを集中させた

盾のズロオ・ジック、あわてて逃げ散ったので、ミサイルは、ジグ・マックへ

避けきれず、火を吹くジグ・マック

 

ジグ・マック・コックピット

失速する

炎が走る

ダ「ここまで来て……ここまで来て……」

無念気に、迫り来るイデオンを睨む

炎が包む

ダミド、宇宙服をつけると、剣を抜く

ダッと宇宙に飛び出すと、迫り来るイデオンの前に、仁王立ちになる。

ダ「ハルル様、私はバッフ・クランの武人ですぞ」

イデオンに斬りかかって行く

巨象に立ち向かう蟻の如く

バーン

イデオンの一撃が、ダミドを叩きつける

素っ飛んで行くダミド

 

イデオン・Aメカ・コックピット

宇宙のかなたに小さくなって行くダミドの最後を見つめるコスモとデク

コ「――――――」

 

亜空間

失速するソロシップ

声「いったいどこに行くんだ、俺達は?」

声「方向を決められないんだ……流れるところまで流れるしかない」

 

ドロワ・ザン・ブリッジ

兵士から報告を受けているハルル

ハ「そうか、散ったか、ダミドは」

兵「は……まことに惜しいことで」

ハ「……汚いな……」

兵「は?」

ハ「戦功は認めよう……が戦い方が汚い」

 

同・戦闘機発着デッキ

戻ってきたズロオ・ジックから降りて来る兵士達

中には、負傷したものもいる

兵士A「助かったぜ……九死に一生を得たって奴だ」

兵士B「あのまま、ダミド様が死んでくれなかったら、次の盾は、俺達だぜ」

A「まったく気がふれたとしか思えんよ」

笑い合う

ハッとして直立不動になる

ハルルが聞いていた

ハ「そこまでダミドを追い詰めてしまったのは、この私だ………しかし、所詮ダミドは、その程度の男だったのだ」

はき捨てる様に、つぶやいた

 

類人猿星

水たまりで水を飲んでいる類人猿グループA

そこに、他のグループBの類人猿達が来ると、威嚇する様に歯をむき出す

しばらく睨み合っていたが、グループA、こそこそと逃げ出して行く

水を飲み始めるグループB

それをうらやまし気に遠くから見るグループA

近くに失速して来るソロシップ

それは、まるで神の降臨を思わせる厳粛さがある

呆然と見つめる類人猿達

 

<つづく>

 

 

第17話「激闘・猿の惑星」

イデオ・バスタ・コクピット

ベントの指導でパイロット要員Pが操縦している。

が、ヨロヨロと舞い上がって、安定しない機体

ベン「駄目駄目!何年パイロットやってんの、君は」

P「二年になります!」

ベン「えばって言うなよ、もう」

P「すいません」

 

イデオ・ノバ・コックピット

モエラの指導で、パイロット要員Tが操縦席に座る

いきなり操縦桿を引くT

機体、つんのめる

弾みでしたたかフロントに頭をぶつけるモエラ

モ「痛ててて……」

T「すみません」

モ「(殴って)悪いと思ったら、早く操縦出来るようになれ」

頭をさするモエラ

 

イデオ・デルタ・コクピット

ベスが手取り足取り、パイロット要員Aに教えている。

べ「別に、この機体が特別だと考えなくていいんだ……カービアンだと思ってみれば、大したことじゃない」

A「はい」

 

ドロワ・ザン訓練室

ダダダッと怖れをなして、後ずさりする面をつけた兵士

その兵士に剣を付きつけ、避けたところに飛びこむと投げつけるハルル(面をつけている)

コンテ・ゲラ(バッフ・クランの格闘術で、フェンシングに投げ技を取り入れたようなもの)の訓練中なのだ

<後略>

 

 

同・メインブリッジ

分厚い書類を見ているハルル

前にギジェ

ギ「そこに記録された数字は、明かにロゴ・ダウから膨大なエネルギーの放射を示すものです」

ハ「!」

ギ「その残存量から、コンピュータで元値計算をしましたところ……計算不能、無限大と」

ハ「すると、そのエネルギーが、イデか」

ギ「おそらく……いや、間違いなく伝説の無限力イデです」

ハ「父ドバの信念は、証明されたのだな」

ギ「(頷く)……」

ハ「で……イデとは、どんなものだ」

ギ「(首を振り)判りません」

ハ「ム?」

ギ「今一度、資料をご覧下さい……その一番高い数値を示している場所……」

ハ「?」

ギ「そこは、あの異星人が持ち出した……異星人に言わせる所の第六文明とやらの遺跡があった場所です」

ハ「!何と……では、あの巨大メカと母艦にイデが!」

ギ「イデが搭載されているのです」

 

同・戦闘機発着デッキ

出撃準備中の兵士達

来るハルルとギジェ

ギ「巨大メカの内、一機を捕獲して、詳しく調査すれば、全てが解決されます」

ハ「(頷く)……ギジェ……」

ギ「は」

ハ「カララのことは、ふっ切れたようだな」

ギ「不思議と気が晴れています」

ハ「以前は、私の顔色をうかがっていたところがあったが……強くなった……」

ギ「ロゴ・ダウでの数週間……よい精神修行でした」

ハ「………」

兵士A、駆け寄って来る

A「ギジェ様、準備完了です」

力強く頷くギジェ

ハルル、頼もしく見送った

 

ソロシップ檻

「冷たいわよ、アンタ」

カーシャが見張りの軍人に文句を言っている

相手にせず、知らん顔している軍人

カー「差別しないでよ!」

コ「いい加減にしろよ……いつまでも」

カー「負けたくないじゃないの……地球育ちで、父も母も知っているベスやシェリルに」

コ「俺も地球生まれだぜ」

カー「そうだと思ったわ……楽天的で、お人好しだもの」

コ「何イッ」

そこに、カララとリンが食事を運んで来る

リ「二人共、止めなさいよ」

カー「アンドロメダ星雲M893……夏と冬だけの星だったわ」

コ「ム?」

カー「私の生まれた移民星よ」

コ「カーシャは、移民星生まれだったのか」

カー「生まれてすぐ両親から引き離され、管理体制下の保育施設に入れられて……」

カ「………」

カー「男も女もなく育てられた……過酷な自然の移民星で生き残る為の政策だったのよね」

コ「同じ地球人なのに、偉い違う育ち方をしてきたんだな」

カー「それから、ずっと一人で生きてきたのよ……私は、私で守るわ……それなのに、こんな所に入れられて」

カ「皆んな心配しています」

カー「何が判るのよ……異星人に」

リ「カーシャ、言い過ぎよ」

カ「ベスも、シェリルも……一人で生きていけないことを知っているのですね」

カー「何よ、アンタ」

カ「助けてくれる人が必要です……困った時には手を差しのべてくれる人が……宇宙で生きて行くためには……」

コ「………」

カ「私…このソロシップに来て、それが判ってきました……バッフ・クランでは、それがなかった……出世主義で、いつも相手を蹴落とすことばかり考えて」

コ「……カララ」

カー「ふん、何よ、えらそうに……異星人に説教されたなんて、地球人の恥だわよ」

カ「………」

 

 

同・メインブリッジ

「またかよ、シェリル……地球に戻るか戻らないか……結論は出てるんだぜ」

うんざりしたベントが、座ってたテーブルから飛び降りる

シ「判っているわ……私も一時は、頭に血がのぼって、軽率なことしてしまったりしたけど」

x    x    x   

十五話より、シェリル脱走のフラッシュ

x    x    x   

シ「今度は、感情論だけで言っているんじゃないの」

ハ「地球で開発された巨大コンピュータ・グロリアに、第六文明語の解読をさせようと言うんだろう」

ベ「ム?どうして、ハタリ」

ハ「ここにいりゃ、二人の会話は、嫌でも耳に入るさ」

ジ「いいアイデアじゃないか、それは」

シ「第六文明語の解析は、イデなるものの解析につながる筈よ、きっと」

頷くハタリ、ジョリバ

ベ「しかし……」

ジ「異星人の追跡だろう、問題は」

ベ「何度も繰り返すが……俺は、軍人として、地球を争いに巻き込みたくない」

シ「カララの言っていた発振器を使いましょうよ」

ハ「発振器?」

シ「亜空間・センサーを狂わす装置らしいの」

ベ「しかし、あれはまだ試作中だ……どう転ぶか判らない」

そこにロッタがルウを抱いて来る

ロ「(オロオロと)ベス、シェリル……」

ベ「どうした?ロッタ」

ロ「熱がまた出てきたのよ、ルウ……一時下回ったんだけど……カゼかしら」

シ「えッ」

ルウ、熱い顔でセキをする

 

<中・CM>

 

 

ソロシップ・機関部

急ぎマイクを取るジョリバ

ジ「(マイクに)オウ、何だ?ベス」

 

同・メインブリッジ

ベ「(マイクに)バッフ・クランだ……その上、ルウがはしかにかかった……大至急、エンジンを始動出来るようにしてくれ!」

ジ「そ、そうか……全力を上げる。もう少し待てないか」

ベ「(マイクに)頼むぞ、ジョリバ」

ジ「それと、例の発振器を試してみようと思うんだ」

シ「出来たの?ジョリバ」

ジ「判らない……乞う、ご期待さ」

ベ「よし……モエラ、テクノ、ベント……イデオンを操縦しろ…バッフ・クランをなるべくイデオンに引きつけておけ」

モ「時間稼ぎか、判った」

駆け出て行くモエラ、テクノ、ベント

ベ「ハタリ……ここから一番近い移民星とコンタクトを取れ……そこに一時避難だ」

ハ「おう……」

シ「(訴える目で)ベス……」

ベ「(頑に決心は変えまいと)……」

 

ジグ・マックコクピット

A、B、Cメカが上昇して来るのが見える

ギ「(ニヤッと)よし、奴らのあの体勢は、ドッキングする体勢だ……メカとメカの間に潜り込め、ドッキング破りだ!」

兵士A「は」

 

類人猿星・上空

ジグ・マック、急上昇しつつ、ドッキング体勢に入ったA、B、Cメカの間に、体当りするように、急降下していく。

迫り来るジグ・マックに、あわてて分散していくA、B、Cメカ

 

上空

再びドッキング体勢に入ろうとするが、ジグ・マックの突っ込みに、再び分散するA、B、Cメカ

 

ソロシップ内・檻

戦況を見つめている、コスモ、カーシャ

コ「駄目だ……避けちゃ駄目だ……」

カー「(も、ジリジリしている)………」

 

<中略>

「嫌よ、私は!」

カーシャがわめく

カー「随分勝手なことね……アンタ達」

ベ「それは判っている……しかし、緊急事態だ」

カー「じゃア、この戦いが終わったら、またここに逆戻りするのね」

ベ「……」

コスモはそばに座っている

カー「(皮肉っぽく)いいわよね、思い通りになって」

シ「カーシャ:

カー「冗談じゃないわよ……私は、人形じゃないのよ、ロボットじゃないのよ……(ベスの口真似で)緊急事態だ、操縦しろ(戻って)はいそうですか……そう簡単に、コロコロ気持を切り換えられますか」

ベ「頼む、カーシャ、コスモ」

頭を深く下げるベス

コ「!」

カー「!」

シ「!ベス……何もそこまで卑屈になることないわ……二人に頼むことが間違ってたのよ」

ベ「イデオンを操縦してくれ」

カー「(強がって)今度は、泣き落とし……演技ベタよ、ベス」

ベ「(ムッとなるが)……」

「コスモォ」  デクが来て叫けぶ

コ「!」

デ「男は、言い訳するなって言ったじゃないか……男は、潔くしろって言ったじゃないか、嘘つき!」

コ「デク」

デ「僕なんて、死んでもいいや……だけど、だけど……ルウが死んじゃうんだぞ……はしかの薬見つけないと、死んじゃうんだぞ」

コ「!」

カー「………」

デ「(涙で)ルウを守ってよ、ルウを……コスモォ!」

ベ「俺も間違っていた……コスモとカーシャを頼りにしようとしたのが……」

踵を返し、行きかけるベス、シェリル

コ「(叫ぶ)やらせてくれ!ベス……俺にイデオンを操縦させてくれ!」

 

 

ソロシップ・メイン・ブリッジ

コ「カララ!!」

カ「コスモ?!戦いに出るの?!」

コ「イデの伝説は、英雄の話だけなのか?」

カ「え?」

コ「判らないんだ!俺にはなぜ、俺達の方がイデオンに合っているのか!!」

カ「……英雄は……」

カーシャ、ベス、シェリル、デクらくる。

カー「コスモ!!あんたコロコロ変るのね」

コ「女は黙ってろ!!」

カ「英雄は……死んだ後、世の中を闇が閉ざす。一人の赤子が、英雄の剣に触れた時、翼をもって、闇の中に、うごめく八ツ頭の竜を求め、再生をする」

コ「……イデオンって、イデなのか?」

カ「私は、信じます」

コ「よし!!カーシャ、ぐだぐだ言わず出撃だ!!」

 

Aメカ・コックピット

操縦席に座りながら――――――

コ「(Mで)俺の生きざまは、チビ達を危機から守ることなんだ……チビ達を無事に地球に戻すことなんだ」

デ「コスモ!」

コ「こいつ、生意気なこと言いやがって」

と、デクの額をこずく

ニコッと笑い合うコスモ、デク。

 

Bメカ・コックピット

カー「私は、デクに動かされたんじゃないのよ」

モ「………」

カー「死ぬのは、嫌なのよ……こんな宇宙の果てで」

モ「誰だって、死ぬのは、嫌さ」

カー「(Mで)信じない……信じるものか」

荒々しく急発進させる

 

イデオン・Bメカ・コックピット

ズロオがウロチョロする

カー「(ヒステリックに)うるさいわね、もう……こうしてやるわ」

 

宇宙空間

イデオン、両手を拡げ、手を目一杯拡くと、来たズロオの一機を握りつぶす。

バリバリバリッ

 

イデオン・Aメカ・コックピット

コ「カーシャの奴、相当頭に来ているぞ……怖ろしーッ」

 

ジグ・マック・コックピット

握りつぶされたズロオが墜落する

ギ「(驚愕)あのパワー……やはりイデのエネルギーを搭載しているからだ」

 

ソロシップ・隔離室

苦しさに泣く声もか細いルウ

ロ「呼吸が弱くなって来たわ、ラポー」

ラ「(祈るように)早く……早く……」

 

同・メイン・ブリッジ

イデオンとジグ・マックの死闘

モニターにジョリバが映る

ジ「ベス……DSドライブ準備完了だ」

ベ「(頷き、マイクに)コスモ、カーシャ……ソロシップに戻れ!DSドライブするぞ」

 

類人猿星

ソロシップがゆっくり飛翔していく

それを次々と集まってきた類人猿が見送る

まるで、神をあがめるように――――――

突如、空間から消えるソロシップ

 

ジグ・マック・コックピット

「あッ」となるギジェ

ギ「異星人が亜空間ドライブした……」

兵士A「ギジェ様……亜空間・センサーが乱れて役に立ちません」

歯噛みするギジェ

 

亜空間

DSドライブするソロシップ

声「(歓喜で)振り切ったぞ……バッフ・クランを振りきったぞォーッ」

 

 

ソロシップ・メイン・ブリッジ

コスモに駆け寄って来るデク、アーシュラ、ファード

ア「(コスモに飛びつき)コスモにィちゃん!」

デク、アーシュラ、ファードの嬉しそうな顔、顔

コスモ、満足そうに頷く

 

アジアンへ向かうソロシップ

猛スピードで散らばった星が近づき、通り過ぎる

やがて、一点の星アジアンが急激に近づいて来た

 

<つづく>