The Word of Poropose

 

 

第11話「追撃・遺跡の星」

ガタマンザン・廊下

小走りにきて、直立不動になる全艦の兵士達。

その中を気高く歩いて来るハルル。  後に続くグハバ・ゲバ。

直立不動で迎えるギジェとダミド

ギ「ハルル様、お元気でなによりです」

ハ「じじむさい言葉を使うな!」

ギ「は・・・・申し訳ありません」

ハ「(鼻で笑い)カララに骨抜きにされた男、二人か」

 

同メインブリッジ

緊張しているギジェとダミド  外を見ていたハルル、振り返る

ハ「ロゴ・ダウの全面探索もせずに、異星人と接触したのは許しがたいな」

ギ「充分な武器も無く戦った我らの力を認めていただきたい」

ハ「まだ判ってないな」

ギ「でなければ、アバデデ様の武功まで無駄死にとなります」

ハ「汚名をそそごうとする武人のあせりほど、見苦しいものはない」

ギ「ハルル様!」  ハルルいきなりギジェの頬を打つ

ハ「ギジェ・ザラルは、ロゴ・ダウへイデの捜索に戻れ!」  ギ「(驚愕)!」

ギ「ロゴ・ダウに、イデは、存在しません・・・」

ダ「-----」

ギ「異星人がすでに持ち出したか・・・・あるいは、存在しなかったと・・・・・」

ハ「私は同じ言葉を二度と言わんぞ」  ギ「・・・・・」

無念そうに最敬礼すると、踵を返して出ていく

 

同ブリッジへの出入り口

来るギジェ。  ダミドが立っている

ダ「ギジェ・・・何故、もっと要領よくせん」

ギ「お前が忠告しに来るとはな」

ダ「友の失態は、見ていて気持のいいものじゃない」

ギ「(鼻で笑い)持つべきものは、友か」

ダ「悲観するな・・・・・ハルル様も、そのうち判って下さる」

ギ「-----」    行こうとするギジェ

ビラス「ダミド様、出発の用意が出来ました」  ギ「ム?」

と、立ち止まり振り返る

ダ「なに・・・ハルル様の供でな・・・巨人を探りによ」

ギ「成程・・・・・俺のいない間に、充分機嫌を取っておけよ、ダミド」

立ち去る。  「ふん」と鼻で笑うダミド。

 

ソロシップ・農園

泣き続けるルウをしきりにあやすロッタ。

ロ「お腹減っているのかな?ルウ」

山羊の乳の下に、ルウを置く  ルウ、ちょこっと乳に吸いつくが、すぐに泣き出す

ロ「困った子ねぇ・・・・」

そこに泥んこになったデクとファードが、キャッキャッと転がるように、追いかけっこしてきた。

ドンと、ロッタにぶつかるデク。  ロ「キャッ!」

危うく転びそうになる  デクとファード、ロッタを境に、掴まえっこを始める

ロ「止めて、デク・・・・ファードも」

二人止めようとしない  ロ「デク!」

怒って、デクの耳を引っ張る  デ「痛い、痛いよ、ロッタ」

ロ「なによ、二人とも泥んこになって・・・ルウだけでも大変なのに・・・貴方達まで手を焼かせないで頂戴」

デ「離してよ、ロッタ・・・・(ブツブツと)外に出たって、何もないしさ。なんでこんな星にいるのさ」

フ「僕だって、泣きたいよ・・・・ねぇデク」

ロ「仕方ないでしょう・・・・ソロシップが、思うように動かないんだから」

泣き続けるルウ

 

同イデオン・表

「そんな言い方ってないでしょう、シェリル」

カーシャがシェリルに食ってかかる

カ「女だから、おしとやかにしろって言うのなら、貴方だって、そうじゃなくて」

シ「そんな事言ってるんじゃないのよ。行動を慎みなさいと言うだけ」

カ「慎んでるわよ、これでも」

整備工達、ニヤニヤ見つめている

シ「そうかしら・・・・・自分勝手な出撃やら・・・ソルコンバーばかり整備した上に、やたら飾りたてちゃって・・・・」

カ「同じ操縦するなら、自分好みにしたいわよ」

シ「それがいけないのよ・・・カーシャの持ち物じゃないのよ、これは・・・・他の人が使う事だって・・・・」

カ「(鼻で笑い)貴方が何言おうと、私には、分かってるわよ」   シ「?」

カ「要するに怖い訳よね・・・自分が生き延びることばかり考えてるから・・・・」

ビシャっと、カーシャの頬を叩くシェリル

シ「死ぬのが好きな人がどこにいるのよ!」

カ「(頬を撫でつつ)パイロットが一度出撃したら、明日のことなど考えないわ・・・貴方はブリッジでブルブル震えてりゃいいんだもの」

シェリル、また平手打ち。しかし、今度はその腕を受けとめるカーシャ

シ「-------」  カ「-------」

ニヤニヤ笑っている整備工達  シェリル、乱暴に腕を振りほどくと、ブイッと立ち去る

 

ドロワ・ザン・ランチ・コクピット

ハルルとグハバが並んで座っている

フロントに、遺跡の星が近づき、そして、ソロシップの勇士が迫って来る

ハ「あの左端の岩の頂に」

グ「(パイロットに指示)左端、岩の頂に着地させろ」

 

ジグマック・コクピット

ダミドが指示を仰いでいる

ダ「(交信)判りました。着地体勢に入ります」

 

ソロシップ機関部

ベス、カララがジョリバとエンジン部分を指差しつつ、話している。   来るシェリル

シ「ベス」 ベ「(振り返り)やぁ、シェリル」

シ「何よ、そんなにのんびり話しこんでいて」

ベ「ソロシップが、何故、急に動かなくなったのか検討してたんだ」

シ「話し合いで動くようになると思って・・・・」

ジ「そういらつくなよ、シェリル」     シ「(カララ)貴方、何よ・・・・」

カ「何、シェリル」  シ「来易く呼ばないで・・・貴方、どうして、ここにいるの?」

ジ「機関部、見たいって言うんでさ」

シ「貴方、そりゃぁ・・・・バッフ・クランの攻撃に対して、いろいろ力を貸してくれたのは、感謝しているわよ」

カ「(ニコリと)-----」

シ「でも、貴方、捕虜なのよ・・・勝手に歩き回らないでよ」

ベ「いいjないか、シェリル」

ジ「そうだよ、そんな固い事言わないでさ」

シ「ジョリバ・・・動かなくなった原因わかったの?」

ジ「ソロ星で整備したエンジンに異常は見られない」

ベ「原因はどうも第六文明人の作ったソロシップ本体にあるような気がしてね」

シ「(笑い出し)馬鹿な事言わないで、ベス。エンジン以外に動かせる物がある筈ないわ」

ジ「俺も、ベスにそう言ってるんだがね」

そこに兵士が駆け込んで来る。  兵士「バッフ・クランだ」

 

遠目の岩の頂に、悠然と着地するドロワ・ザン・ランチとジグマック

整備工「こっちがおとなしくしているのを見越して、あんなところに」

ベ「様子を探りに来たのか?」

コ「よし、先制攻撃を加えてやろう」 と、メカに駆け込もうとする

それを止めるベス  ベ「俺達から好んで、戦いをしかける必要は無い」

コ「何でだよ、ベス・・・・攻撃こそ最大の防御じゃないか」

ベ「攻撃の意思がないのかもしれんぞ」  コ「そんな奴らじゃないだろう」

 

ソロシップ部屋

窓から岩の頂のドロワ・ザン・ランチとジグマックを見上げるカララ

カ「(Mで)何故、すぐに攻めて来ないのかしら・・・あれ程、慎重なのは・・・もしかすると・・・

(思わず声が出る)ハルル姉さんが」 慌てて口を押さえた

 

ジグマック・コクピット

ダミドじれる

ダ「何をしているんだ、ハルル様は・・・こうなったら先制攻撃して、いいところを見せてやる・・・いくぞ、ビラス」

ビ「は」

 

イデオン表

飛翔するジグマック

コ「来るぞ、ベス」 ベ「よし、防御体制を取れ!」  メカに乗り込んでいく

 

ドロワザン・ランチ・コクピット

ハルル、イデオンの動きを見て驚愕

ハ「成程な・・・報告の通りだ」

グ「誰だ、勝手な行動をする奴は・・・(交信)戻れ!」

 

イデオン・Bメカ・コクピット

ジグマックが再び着地する

ベ「ム?戻ったぞ・・・攻撃するのではないのか」

コ「いつもと違うぞ、ベス」

 

ソロシップ・メインブリッジ

「ハルル?誰です、それは」  振りかえるシェリル 前にカララ

カ「私の姉です。宇宙軍総司令官ドバの代理・・・・」

パイロット「姉・・・・?女なのかよ・・・女が救援に来たって、大した事ないぜ・・・・なぁ皆」

頷き笑う男達

カ「ハルルの恐ろしさを知らないから、笑っていられるんです・・・・

ハルルは、バッフクランきっての戦争功労者・・・」

パ「ハルルが女傑なら、シェリルも女傑の部類だな」

シ「私は戦争なんて嫌いよ」 カ「侮らないで、用心して下さい」

シ「判ったわ・・・判ったから、あっち行って頂戴」

カ「戦法だって、今までとは違って・・・」

シェリル、パイロットと話し始めている。  信じていないのだ

カ「-----」

 

ドロワザン・ランチ・コクピット

ソロシップを見下ろすハルル。 そこに入って来るグハバ

グ「ギジェの残した戦闘データが、これに」

ハ「(振り返り)ム?」

グ「これによりますと、巨人と、あの母船は、密接な関係にあります」  ハ「----」

グ「巨人のパワーダウンを、母船がパワーアップさせたと思われるデータが一度」

ハ「巨人の弱点は、母船だと・・・・」

グ「母船の破壊が、巨人をも破滅させる事は自明の理」

ハ「さすが、私の見こんだグハバ・ゲバ」

グ「有難うございます」

ハ「ギル・バウを待機させろ」

グ「は・・・・(パイロットに指示)ガタマン・ザンに連絡・・・・ギル・バウ15機、ジグマック一機、至急投入させろ

 

<CM>

 

ソロシップ通路

小走りにカララが来る。 その前に立ち塞がるように、ルウを抱いたロッタ

ルウ、ルウ、安らかに寝息を立てている

カ「ベス・・・見なかった?」  ロ「(ツンと)さァ」  カ「そう・・・・困ったわ」

ロ「あまり、変な事言いふらさないで、貴女」  カ「えッ?」

ロ「それでなくとも、船内の人達、動揺しているのよ」

カ「私は事実を言っているだけ」 ロ「・・・・貴方のこと、皆何て噂してるか、知ってて?」

カ「ちょっと、おっちょこちょいだけど、可愛いかな?」

ロ「(ムッと)まァ」  カ「ねぇ、ホントにベスの居所、知らない?」

ロ「知るもんですか」 ツンと行ってしまう。  ルウ、むずかる カ「-----」

 

Aメカコクピット

コ「嫌だなぁ・・・こういう不気味さは」 操縦桿をギュッと握り締める

モニターにカーシャ

カ「怖かったら、降りてもいいのよ、コスモ」

コ「カーシャこそ、震えてるんじゃないのか」

 

ソロシップメインブリッジ

岩の頂に着地したドロワザン・ランチが無気味な静けさで、きらりと光る。

シェリル、ゾクッとなる  シ「何故、見ているの?何故、動かないの?」

 

同部屋

ロッタに抱かれたルウに、リスの尻尾が撫でるが、ルウ、喜んでいる

心配げに肩を寄せ合っているデク、アーシュラ、ファード。

すすり上げるファード

デ「泣くなよ、男だろ・・・俺がついてるじゃないか」

フ「だって・・・・だって・・・・」

デ「(強がって)ふん、弱虫は、これだから、嫌だぜ」

バタンとドアが開く デ「(悲鳴)ヒアーッ!」

ロッタにしがみつくデク。  リンが入ってきたのだ

テレ臭そうに頭をかくデク。  しらけている

 

イデオンBメカコクピット

操縦席のベスの逡巡

ベ「(Mで)やはり先制攻撃をかけるべきだったか・・・・この静けさに耐えられなくなったら、収拾がつかなくなる・・・」

そこに入って来るカララ  ベ「(驚き)カララ!」  カ「用心して、ベス」  ベ「ム?」

カ「ハルルが指揮を取っているのは、もう間違いないわ・・・判るのよ、私には姉の考えが・・・・」

ベ「成程、君の姉さんが増援に来たというのか」 カ「ええ・・・・きっと」

フロントから、ドロワザンランチを見上げる

 

ドロワザンランチコクピット

ハ「早まったかもしれぬ」   グ「・・・・・・・」

ハ「ギジェは、失態を重ねたとはいえ、父ドバの認めた男・・・・」

グ「誠に・・・・・」

ハ「理詰めのギジェが、ロゴダウのイデ捜索に手を抜いていたとも思えぬしな」

グ「呼び戻しますか?」  ハ「イデオン・・・・非常に興味がある」  グ「(頷く)----」

兵士、ヘッドホーンを外しつつ

兵士「ハルル様・・・・ジグマック一機、ギルバウ一五機配備完了しました」

ハ「機は熟した」  グ「早速、司令を」  最敬礼するグハバ

 

ジグマックコクピット

ダ「(交信で)ダミド・ベッチ・・・・ギルバウ五機を率いて、先発します」

切る。  緊張するダミド。  そこに入って来るビラス。  ダミドに耳打ちする

ダ「驚き)何ッ!ギジェが呼び戻される!」

ビ「はい・・・・ハルル様の兵士から、密かに連絡がありまして・・・・」

ダ「さすが、宇宙総司令官ドバの娘だけの事はある・・・・・」  ビ「・・・・・」

ダ「ヒステリー症状から、素早く冷静になれるところはな」  ビ「は、はい」

ダ「(考え込み)ギジェが戻るか・・・・」   ビ「-------」

ダ「(自分に言い聞かせるように)ま、いいわ・・・この戦いで功を上げれば、よいことよ」

ビ「ダミド様なら、容易い事・・・・・」

ダ「お前も、世辞を言えるようになったとはな」

ビ「め、滅相もない・・・・お世辞など決して言いませぬ」

ダ「(笑って)ハルル様に、良い所を見せねばならぬ・・・・出動だ」 

ビ「は」   グッとソロシップを睨みつけるダミド

 

ソロシップメインブリッジ

完全にジグマック、ギルバウに囲まれてしまっている。

じっと息を潜めて、見つめているシェリルと、パイロット達。

と、ジグマック、ギルバウが一斉に蒼白く輝きはじめた

(例えば、灯を消していたのを、一斉に付けたため、光がフロントから漏れて、光った)

ギョッとなるシェリル  ジグマックとギルバウ5機が飛翔

パイロット「く、来るぞ!」  墨の方で唇をかむカララ

カ「(小声で)・・・止めて、ハルル・・・・」

 

空中

イデオンを一直線に強襲していくジグマックとギルバウ5機

イデオン、スムーズに動きはじめる  コスモの声「おっ、今日は調子いいぞ」

飛翔するイデオン  ジグマック、イデオンを攻撃しつつ、飛び去る

と、後方からギル・バウが襲う  イデオン、右に左にかわしつつギルバウを撃墜させる

ジグマックと、ギルバウが交互に攻撃して来るのだ

 

ジグマックコクピット

ダ「(怒鳴る)休ませるな!巨人の奴等に考える暇を与えるな!」

 

イデオンAメカコクピット

追って来るギルバウ。  ミサイルを発射するコスモ。  撃墜。 

左から来るギルバウ  逃げていくジグマック

コ「逃がすものか!」  モニターのベス

ベ「待て、コスモ・・・後を見ろ」  コ「え?」

 

空中

いつの間にか、ソロシップから遠く離されているイデオン

ソロシップを襲撃している別のジグマック

 

イデオンBメカコクピット

ベ「まずい!戻るんだ」

 

ジグマックコクピット

ダ「巨人を母船から引き離す作戦、見破られたのか?」

 

ソロシップメインブリッジ

攻撃の振動に、椅子にしがみつくシェリル

シ「駄目だわ・・・・このままでは、破壊される」

 

空中

ソロシップを爆撃していたジグマックが、ミサイルを後方に浴びる

イデオンが戻ってきたのだ。  ジグマック、イデオンへも攻撃するが、ソロシップからの攻撃に会って、逃げるように飛翔する

イデオン、ギルバウを撃墜しつつ、ソロシップに戻っていく

 

Aメカコクピット

コ「戻るのはいいけどベス・・・・このまま守りに廻ったら、僕達が不利だぜ」

 

Bメカコクピット

ベ「判ってる・・・しかしな、ヘタに動いて、ソロシップを破壊されたら、どの道、俺達は、生きていけないんだ」

 

ジグマックコクピット

戻り地上に立とうとするイデオンが見える

ダ「(ニヤリと)しめただ!巨人が地上に立とうとする一瞬のスキが勝負だ」

ビ「は・・・・作戦通り、ギリギリまで降下して、最短距離で、ミサイルを」

ダ「全速だ!」

陽炎に包まれているソロシップとイデオンが急速に近づきはじめる

ダ「今だ!発射しろ」  

急降下しミサイルを撃ちこもうとした刹那、激しい衝撃。

味方のギルバウのミサイルが当たったのだ

ビ「あッ」  驚きに操縦を誤る

急上昇するが、反対側から来たジグマックに接触

弾みで、壁に叩きつけられるダミド

ダ「ウワァーッ!う、腕が・・・・」

激痛に、腕を押さえて転げまわる

 

谷間

ジグマック、そのまま地上に墜落、自爆する

 

ドグマック・コクピット

ハ「(舌打ち)今一歩のところを、ぶち壊しおって」

 

ソロシップメインブリッジ

次々と引き揚げていくドロワザンランチと、ギルバウ

思わぬ展開に、呆然となるシェリル

 

イデオン・表

出てきたベス、振り仰ぐ  岩の頂に敵の姿はない

ふっと振り返る  カララが立っている

ベ「・・・・(Mで)カララ・・・・信用出来るかも・・・しれん」

見つめるベス

 

ガタマンザン・ダミドの部屋

目を開けるダミド  包帯だらけで、ベッドに寝ていた

軍医が覗き込んでいる

軍医「おっ、気がついたな」  ダ「(ハッと)・・・・よくよくツキのない男だ、俺も・・・・」

軍「そう悲観することも、あるまい」

ダ「この失態で・・・よくて本星に送還、悪ければ銃殺」

軍「あの状況では、決してダミドが不利じゃない筈だ」

ダ「(怒鳴る)そんな悠長な事言っておれんのだ!」  軍「ム?」

ダ「俺は、ギジェのようなねっからの武人育ちじゃない・・・ラスの農民だったオヤジが必死に稼いだ金で、サビアの位を買った」

軍「・・・・・」  ダ「子供の頃、よく笑われたものだ・・・・剣よりクワの方が良く似合うとな」

軍「成程、それで実力で見返してやろうと・・・・」

ダ「出世の為なら、何でもやる・・・そう心に誓って、イデ捜索隊に志願したのだがな・・・・」

軍「・・・・・・」

ダ「それが裏目裏目に出ようとは・・・・・(イラついて)あの巨人だ!あの巨人のために、俺の人生は滅茶苦茶になってしまった・・・・このままで終わりたくない!」

唇をかむ。

 

同メインブリッジ

ハルル、考えている。  前に軍医

ハ「まだ使えるな」  軍「は?」

ハ「ダミドの屈辱感が、次の行動の糧になる・・・利用しない手はあるまい」

ほくそ笑む。  ゾクッとなる軍医

<つづく>

 

 

第12話「白刃の敵中突破」

宇宙空間

ドロワザンが眠った様に---。

 

ドロワザン・コポラ・格納区

グハバ、直立不動して並んだ数人の兵士達の一人一人を見て歩く。

グ「うむ、なかなか良い面構えをしているな・・・名は?」

サ「は、サンラであります。階級ラスの農民!」  グ「今度の任務を言ってみろ」

サ「(棒読み風に)ロゴ・ダウより逃げ出した異星人の母船に、潜りこみ、その弱点の調査と、内部から混乱せしめることであります」

グ「いいぞ、元気がある・・・・サンラ、今回の諜報部隊の指揮を取れ」

サ「(喜色で)わ、私がでありますか」

グ「成功の折には、サビアの位に推してやる」 サ「あ、ありがとうございます」

うらやましげに見る同僚達。  そこへ来るハルル。

ハ「出来たか?準備は」 グ「これから出発させるところです、ハルル様」

ハ「(サンラに)今後の情勢を良くも悪くするも、お前達の働きいかんだ・・・・しっかりやれ」

サ「(コチコチになって)か、か、必ずや、ご期待に」  グ「よし、行け!」

最敬礼したサンラ達、二組に別れて、コポラに乗りこむ。

ハ「グハバ」  グ「は」 ハ「イデオンの裏辺りに中継基地を置け・・・・・攻撃隊を集結させておくのだ」

グ「判りました、早速」

 

ソロシップ機関部

機間士達が、あちこちのパネルを開け中を調べている。  忙しそうに動き回る人々。

ジョリバ・エンジン部分の点検をしている

ジ「変だな、どこにも異常は認められないんだが・・・」

ベ「(来て)何で、今まで正常だった半物質エンジンが、おかしくなっちまったんだ?」

ジ「(イラついて)それを調べてるんじゃないか!・・・・・少しは黙って作業しろよ」

ベ「自分の不備を棚に上げて、こっちに当たるなよ」

ジ「何だ、その言い草は!」

詰め寄り、襟首を掴む。  殴るジョリバ

ベ「おお、常套じゃねぇか・・・相手になるぜ」

飛びかかっていく。  壁にジョリバを押し付けて、殴り返す。

驚いて二人を見る機間士達。

「止めなさい!二人共」 シェリルが来る

シ「争っている場合じゃないでしょ・・・いつ敵が攻めて来るか判らないのよ」

ベ「判ってますよ、そんなこと」 シ「判ってたら、早く仕事に戻って欲しいわね」

ジ「(ムッと)えっ、シェリル・・・俺達は、24時間働きっぱなしなんだぜ・・・・生身の人間だぜ」  詰め寄る  

シ「仕方ないわ、こんな事態なのよ・・・・」

老機間士「少し休め、ジョリバも、ベントも」  コップに水を持って来て、差し出す

老「疲れれば、誰でもイラつくものだ」  ジ「(ひったくって飲む)----」

ブッと吹き出す  ジ「こ、これ酒じゃないの」

笑い出す老機間士。  つられて笑うジョリバ、ベント、そして機間士達。

その中に変装したサンラがいた。

シ「とにかく頑張って頂戴」  ジョリバ、ベント、黙って点検を始める

サンラ、さり気なく機関部の構造を調べ始めた。  にやっへほくそ笑む

 

同・農園

円盤型のメカの上で、設置した噴霧機と、放射線を使って、薬を撒いている女性

その後から、芽の成長度を調査し、メモしつつ歩くロッタ  (例えば列によって、成長度の違う小麦群)

額をぬぐう女性。

ロ「ごめんなさいね、・・・・・こんなことを手伝わせてしまって」

女性「どうせ退屈してたとこだから・・・・・」

ロ「お蔭で、大部成果が出始めて来たみたいよ」  笑う顔が強張る。  カララが来た。

ロッタ、視線を合わさない様に、メモを取り始める。  カララ、珍しそうに小麦の穂にさわってみる。

カ「何かしら?これ」  ロッタ無視して、メモを取り続ける

女「ネッ、ロッタ、手伝って貰いましょう」   ロ「(メモしながら)何もないわ」

女「あら、さっき、もう一台メカ動かしたいって・・・・」  ロ「何もないのよ」  カ「ロッタ」

女「(気をきかし)じゃァ、私、代わって貰うわ、疲れちゃったし」

ロ「(強く)駄目!あなた、やって!」

女「(怪訝で)?・・・・・どうして・・・誰がやっても同じじゃない」

ロ「・・・・・・」  カ「-------」  女「ロッタ、変よ・・・意固地になって」

ロ「(激しく)嫌!あの女(ひと)に手伝って貰いたくないの!」

カ「(驚きで)!」 ロッタ、カララを無視する様に、メモを取り続ける。

 

ドロワ・ザン・ブリッジ

物思いにふけっているハルル

その寂しげな横顔に、あの女傑ハルルの面影は無い。

ハ「(つぶやき)・・・・私は、必ず貴方と対等になってみせる・・・・・その時こそ、貴方は、私の方を見てくれる、必ず・・・・・・」

ある所にいる人物に向かって、話しかけるが如く----

キッと顔を上げた、その眉がきつくなる

ハ「(立ち上り)グハバ・・・・グハバ、出発の用意だ・・・・」

 

ソロシップ通路

思い思いの荷物を持った乗員達が、慌しく出てくる

来たベス「?」となる。  その中の一人に-----

ベ「おい、何してんだ。何だ、この騒動は」

男「このソロシップが自爆するって・・・・機関部の異常で」

ベ「何ッ、誰だ、そんなデマ飛ばしたのは」

男「デマ?俺、確かに整備士のワイトに」

女「私、兵隊が話してたの聞いたわ」  ベ「!」

シ「(来る)皆さん、嘘です・・・・デマに惑わされないで下さい!」

ジ「(来る)自爆なんてしない・・・・機関部は正常です!」

必死に叫ぶ

シ「ジョリバが保証してます・・・・静かに、静かに」  ジ「ベス」

シ「誰?こんなデマ飛ばすの」

兵士「こいつだ!」  カララを引きづり出す  ベ「ム?」

兵「俺達を混乱させようとするのは、異星人の仕業だぜ」

ベ「君がカララから聞いたのか?」

兵「聞かねぇ・・・・しかし、こいつに決まってる」

男「そうだ!カララだ」  ベ「待て!カララじゃない」

シ「何故言い切れるの?ベス」

ジ「ベスは、いつもカララの肩を持つ・・・女に甘すぎるぜ」

苦境のカララ

 

<CM>

 

ソロシップ・表・付近の岩陰

ガダッカのサンラと兵士が発信機に---。

サ「こちらサンラ・・・攪乱成功です。 エンジン不調の為の不安感が、上手くミックスしてくれました」

声「そうか、よくやった」  サ「しかし、まずいことに、カララ様が」

気配に振り返る。  ベス、コスモが立っている。  銃を撃つサンラ

避けつつ、ベス撃ち返す サンラ、銃を乱射しつつ、ガダッカを飛翔させる

追うコスモ。 頂から現れたコポラに吸いこまれて行くガダッカ。

ビーム砲がコスモを狙う。  コスモ岩陰に隠れて、応戦。  ベスいない

と、ソル・アンバーが飛翔してきたので、コポラ、逃げる

 

付近の岩陰

ソル・アンバーを降りたベスとカララが覗いている

ベ「!いつの間にか中継基地を作ってやがる」

カ「ハルル姉さんが考えそうな事だわ」    ベ「恨みがあるのか?」

カ「恨み・・・・ただ会いたくないだけです。ハルル姉さんとは、性格も違うし、顔を会わせれば、喧嘩ばかり」

ベ「姉妹だって、他人の始まり・・・・・」   カ「(意味が判らない)えッ?」

ベ「・・・・・カララ、その(と言いかける)」  カ「ハルル姉さんだわ」

 

バッフクラン中継基地

ガタマンザン・センターから降りて来るハルル

サンラ以下、直立不動。

グ「折角チャンスを与えてやったのに、馬鹿な奴等だ」

ハ「任務を果たさず、逃げ戻ってくるものの顔など、見たくない!」

グ「お前達、ラスの農民で一生を終われ」

力なく立ち去っていくサンラ達。  ハルル、イライラして歩き回る

グ「今一度、スパイを送りますか?」  ハ「(考え込む)・・・・・・」

フト顔を上げる。  岩陰に動く気配。

ハ「グハバ・・・あの岩陰に誰かいる」  グ「何と!」  驚き振り返る

 

バッフクラン中継基地(カララへの嘲笑後)

ベス、自分の服をひきちぎるように脱ぐと、カララに投げる

カララ、それを羽織る  カ「・・・・・・」  ベ「・・・・・・」

一瞬見つめ合うが、すぐに兵士が切りかかって来る。再び、闘うベス。

カ「・・・・・ベス」  幸福そうに、ベスの服をギュッと握り締めた

 

バッフクラン中継基地

疲れたベス、動きが鈍くなり、後から兵士に体当たりされる

転倒するベス。  ドッと兵士がベスに殺到。  カララ、思わず目をおおう

その刹那、ズズーンと地響きがして、ソル・アンバーと合体するソル・バニアー、ソル・コンバー

イデオンが立つ。  うわーと散る兵士達

 

イデオンCメカコクピット

カ「コスモ・・・・雑魚は後々・・・逃げて行く戦艦のアタマにハルルが乗っているんだわ、きっと」

 

イデオンAメカコクピット

コ「もっと優しい言い様ないのかね・・・可愛くない女・・・」

デ「(呆れて)喧嘩しながら、やらないでよ」

 

逃げるガタマンザン・センターにミサイルを発射するイデオン

ガタマン・ザン・センターを掠める

カーシャの声「ほら、ちゃんとしないから、当たらないじゃないの!」

コスモの声「自分の腕を棚に上げるなよ」

 

ガタマンザンブリッジ

傾くブリッジに思わずよろけるハルル

ハ「グハバ!何とかならんのか!」

グ「かわすのが精一杯で」  額の汗をぬぐう

ハ「(悔しいが)あの切りこんだ武人といい、あの巨人といい・・・・敵ながら素晴らしい」

 

バッフクラン中継基地

カララの手を取ったベスが、地上に残った兵士たちを、切り捨てながら逃げる。

命の惜しい兵士達は、慌てふためき、逃げまわるだけで、ベスに見向きもしない

 

台地

ベ「さ、戻るか」  と、乗りこもうとするが、カララが動かない  ベ「?」

カ「ベスは武人です。立派な武人です」

突然涙ぐむと、ベスにしがみつく  驚くベス

カ「死を賭けた男の戦いぶりを示す男こそ、武人の誉れなり・・・・・バッフクランの金言です」

ベ「そんな言葉があるのか」  カ「カララは、うれしい」  ベ「えッ」

カ「侮辱を受けてしまっては・・・もうバッフ・クランに戻れない・・・・」

ベ「カララ」 カ「でも、ベスがいるから平気です」

ベ「(あわって)ちょ、ちょっと待ってくれ、カララ」

カ「ベスがいるから・・・・・・」

決意があった

 

<つづく>