クジラ類の系統図


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はじめにお読みください。
 ここでは記載していませんが、暁新世初期には既に植物食哺乳類が栄えていました。そしてその哺乳類の捕食者として先頭を切ったのが「メソニクス科」の仲間である。イヌやネコ科等が誕生する3千万年も前の話。しかし最初に滅んだのは「クジラ達の祖先であるメソニクス」のたぐいで、滅んだ理由にイヌ・ネコ科の繁栄・・だけなのでしょうか。
 生物の繁栄と餌生物の深い関係について、大昔の鯨類を軸に考えてみましょう。



「その後のメソニクス」
 暁新世から栄始めた肉食哺乳類を順番にあげると「メソニクス科・無肉歯目」「ヒエノドン科・肉歯目」「ミアキス科・食肉目」となる。当初メソニクスの仲間は体格が大きく、同科のアンドリューサルクスに至っては体長4mと史上最大の肉食哺乳類であった。対してヒエノドン科の体長は大きくても1.2m、イタチに似ていたミアキスなどは体長は20cmと現在のイタチより小さい。それでいて何故「クジラ」を海に送り出した後に陸上のメソニクスは滅んでしまったのでしょうか。
 これは私の推測ですが…
 まずこの肉食哺乳類は始新世において大繁栄を成し遂げ、多くの種類・大小様々な仲間を増やす事が出来ていた。出土される化石の種類からすると、のこの時点では3種の肉食哺乳類(無肉歯目/肉歯目/食肉目)は各々安定した生態系で繁栄していたと思われる。が、しかしこの後大規模な環境の変化が起こり補食するはずの餌生物が激減・・粗食に耐えられなかったメソニクス科は漸新世に姿を消したのであると考えました。
 これに着いての根拠として、体格の大きな生物は、餌が極端に減ると適応能力が弱い、そして大きな生物ほど一度に生まれる子供の数も少なく生産性が悪い。環境の激変で最初に絶滅するのは大型生物である事。対して雑食性の小さな生き物は大型の肉食獣から逃れるために細々と暮らしており、その結果環境の変化から起きる大きな絶滅を逃れる事が出来たのではないだろうか。
 メソニクス類が滅んでしまった経路は、実際中生代の恐竜の滅び方と似ている、いや生物の淘汰などそんな物なのかもしれない…。
 では
滅ばなかったミアキス科と言うと「雑食性」だった事から、木の実や葉っぱ、魚などあらゆるものを食べる事で、度重なる環境の変化にも負けず絶滅から難を逃れた。さらに付け加えると歯の構造もより肉を食べやすい構造をしていたのである。そして肉歯目のヒエノドン科はその分布が広かった事が幸いし、一部を除いて絶滅せずに済んだのではないだろうか。
 この漸新世前期の時点で「ミアキス科」は肉食動物としてのニッチを獲得したと言っても過言ではない。
 独走し始めたミアキス科は新しく「ネコ科/イヌ科」、後には「アザラシ科」などの肉食獣を世界各地に適応放散させ、中新世の終わり迄にヒエノドン科・肉歯類を消し去ったのである。

 良い子のみんなもミアキスを習って「好き嫌い無く、なんでも食べよう!」と言う教えでは無いが、あながち間違いでもなさそうだ。現世の生物でも大型種に限っては、「少子化」つまり1頭の子供を確実に育てる方法をにあり、「餌」が取れなくなると子供が作れず急速に個体数を減らしてしまう。
 ならば
「海に行ったメソニクスの子孫は」というと…。(およそ6500万年前)
 移動し続ける大陸には1万メートル近い山、海の中では数千メートルもの海溝が現れた。最初に大量発生したのはプランクトン/足頭類/魚類達。環境の変化に対して強い深海に棲む事で絶滅からの逃げ道を得、さらには大発生が出来た訳である。
 その海中生物の繁栄に伴いメソニクスの子孫も大量に姿を現しては淘汰を繰り返していた。漸新世の生態系バブルを生き延びた歯クジラ亜目の原型「アゴロフィウス科」と、ヒゲクジラ亜目の「エティオケタス科」がクジラ界を占め始めた。鮮新世には現在のイルカ・クジラと同じ様な高度な特徴を備えていたと思われ、魚・イカ類専門のケンドリオン科とプランクトン派のケトテリウム科がニッチを獲得したのだ。
 忘れてはならないのが、深いところに潜ってばかりで本当に陽の目を浴びないマッコウだが、実はどのクジラ類よりも早い時期に独走(独泳)していたのだ。先にも述べた「深海」への適応である。現世のマッコウも有名なダイバーであるが、他のクジラの生態系的位置が決まる遥か1千万年以上前に足頭類の間で「中新世のジャック・マイヨール」と呼ばれ恐れられていた。(笑)深海では敵が少なく、餌も豊富だった事から足頭類などが生活の足を長く・・・じゃなかった、広く伸ばし、浅場の同種に比べると大きく成長する事が出来たのだ。そこで、こんな旨い話(ホントに旨そうだ)を逃す手は無い!イカやタコは魚より動きはニブイし、栄養価も高いとくる。かくしてマッコウ科の仲間はそのズバ抜けた「エコロケーション」と「潜水体質」を持って早い時期に生態系のニッチを獲得した。

 この様に「好き嫌い」ではないが、いかに上手く餌生物を補食出来るか否かによって生態系的位置が決定されるようです。
 そうそう、この深海で恩恵を受けたのはムカシクジラだけではない。現世のクジラでもその恩恵を受け続けているクジラが居る。
 ご存知だろうか?食物連鎖「生態系ピラミッド」。言うまでも無く、その殆どが小さいモノ・弱いモノから順に食われる形で成り立っているのだが・・・史上最大の哺乳類「シロナガスクジラとプランクトン」の関係はどうだろう!ピラミッドの最下層が頂点付近と直接つながっているのだ。つまりヒゲクジラという生物が栄えた理由に「深海」を付け加えたい訳である。深海の底には植物プランクトンが大量に発生し、それらは栄養塩類となり有昇流により浅い所へ運ばれる、すると動物性プランクトンがそれらを餌とし大量発生出来る訳だ。ちなみに動物性プランクトン(ヒゲクジラは主にオキアミなどの甲殻類を補食)は魚よりも栄養価が高いのだ。ビタミンをはじめ高タンパク質なプランクトンをヒゲクジラは逃さなかったのである。現世のヒゲクジラも深海(海溝)の有る海で多数生息し、あたかもオキアミの発生場所を狙っているかの様だ。
 今からおよそ200万年前には、現在のイルカ・クジラの仲間はほぼ出揃ったところでしょう。人類はと言うと、やっと道具を使いはじめたのが丁度この頃です。

※陸から海に戻った「クジラ・イルカ」の生態は、度重なる環境の変化と海というフィールドで独特なモノを持っている。これらの特徴を理解する為には彼らの「体内の構造」「生活環境」「生態系の底辺」まで理解しなければならない。中でも大切なのは「骨のカタチ」であるが、祖先を知る手がかりは「化石」のみ、ですが彼らの特徴を知る上で想像以上に良い標本となっています。

クジラ・イルカの系統図・・・あとがき
かなりの想像力が必要です!(笑)とりわけ祖先については解明されてる部分が少なく、推測の域からなかなか脱出する事が出来ないでいます。この系統図に関しましては多くの資料・専門家のご意見を参考に私個人が作成したもので、誠に勝手ながら微妙な部分については省略させて頂きました。

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