オスカーにかじりつくラビー。

「オスカーの約束」
 1998年1月11日
鴨川シーワールド・・朝の出来事。


「ステラ出産」
1998年1月11日早朝・・・ステラの出産が始まり子シャチの尾ビレが見え始めました。父親のビンゴは別の飼育槽に移されましたが、オスカーは移動を嫌がり仕方なく出産の始まったステラと同じメインプールに残ったのです。
午前8時・・・背ビレが見えたと同時に子シャチは産み落とされました。が、子シャチは泳がず、動かずプールの底に沈んで行ってしまいました。本来なら自力で水面に向かうか、母親が水面に押し上げるのですが母親のステラは知らんぷりでいました。するとどうでしょうオスカーが子シャチに近寄り「頭をカプッ」とやった途端、子シャチは勢い良く水面に向かい呼吸をしました。(ふぅ・・。)

産み落とされた子シャチは幾つかの関門を乗り越えなくてはならず、最初に「呼吸」次に「母親について泳ぐ」そして「授乳」。第一関門は乗り越えましたが、第二関門・どうした事か母親ではなくオスカーに連いて泳ぎ始めました。これでは授乳が出来ない!かくなる上は母性本能を刺激するしかない、子シャチを母親の側で泳がせる為に・・人間が子シャチを横取りする様に見せてみよう・・。「母性本能を刺激する」という荒っぽい手段を取る事に決まりました。飼育係二人が子シャチをステラに引き合わせ様と捕獲した二度目、ステラは飼育係から子シャチを奪い取ってくれたのです。第二の関門を通過したのは11日午後7時の出来事。(良かった。)第三の関門は「授乳」ステラの食事を1.5倍にする事で母乳も増え、13日の午後になってようやく授乳に成功しました。子シャチの名前は全国から応募し、体長200センチ/体重180キロの雌の子シャチには「ラビー」という可愛い名前に決定したのです。
(参考文献:鴨川シーワールド会報「さかまた」No.51)
「約束」
このエピソードをご存知の方は多いと思います。ここで私が気が着いたのが「オスカーとステラ」は1987年10月同時期にアイスランドで捕獲され、千葉の鴨川にやって来た事です。カナダでのシャチの捕獲が困難になった1987年から、シャチの捕獲はアイスランドで行なわれるようになり1997年10月秋、ニシン漁と共に集まるシャチを4頭捕獲し鴨川へ搬送しました。この時のシャチが大きさ順に「ステラ/オスカー/プリンス/マギー」(プリンスはこの後香港の水族館へ運ばれました)。つまりシャチの群の特性上ステラとオスカーが同じ血筋のシャチではないか、という事です。個体の大きさから推定すると搬入時オスカーの方が大きく、ステラとの差を考えると同じ母親ではないにしろ、サドルパッチの模様もかなり酷似している事から同じポッド(群)の兄と妹のシャチではないかと推測します。そうするとオスカーがステラの乳母役を引き受けた訳が納得できますね?もしかしたら出産前にステラは兄のオスカーに「引き受けてチョーダイ?」オスカーはその性格上「ハイハイやらせて頂きますよ」と言った具合に「約束」でも有ったのではないでしょうか。オスカーが別の水槽に移るのを嫌がった訳です。人間ぽく話を進めるのは悪い癖ですけど、ラビーの頭の傷の理由の一つに、兄妹2頭の約束が有った様に思えるのです。(ちょっとセンチかな)

1987年10月搬入時シャチデーター

 

体長(cm)

体重(kg)
ステラ(STELLA)

274

460
オスカー(OSCAR)

320

624
プリンス(PRINCE)

399

?
マギー(MAGGIE)

410

1,050

※オスカーとステラが同じ群の個体であったという資料有りませんでした。しかし可能性は無いとは言えないという事です。(鴨川シーワールド・海獣展示課様より)

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